(37)家族を救ったガンドー
オーストラリアの山間の村、バルドラムズドーフに住むヨハン・シュタイナーは、ガンドーという7歳になるシェパードを飼っていました。
ある嵐の夜、ヨハンが窓から外を眺めると、ガンドーがせわしなく、犬舎のフェンスのなかを行ったり来たりしているのに気づきました。ガンドーは、尾をひくように吠えながら、金網のフェンスに体当たりしていましたが、ついにフェンスを飛び越えて、猛烈な勢いで家に向かって走ってきたのです。
ヨハンは、ガンドーが嵐をこわがっているのだと思って、家の中に入れてやりました。
ところが今度は、ガンドーはしきりに家の外に出たがり、騒がしく吠えながら、家族と玄関の間を行ったり来たりするのです。
興奮している犬を鎮めようと、ヨハンが玄関のドアを開けると、ガンドーは、外に飛び出して、正面の山に向かって、激しく吠え立てたのです。
ヨハンが山を見上げると、風雨や雷鳴にまじって、土砂が山の斜面を落ちてくる音が聞こえました。
ヨハンは、大急ぎで両親とガンドーを車に乗せて、暗やみを走りだしました。そして、数百メートル走ったか、走らないかというところで、大量の土砂が彼らの家を押しつぶし、飲み込んでしまうのを目にしたのです。
まさに、間一髪の脱出劇だったのです。
(参考資料)
「ニュースになった犬」 マーティン・ルイス著 筑摩書房刊