(18)家で待つ愛する者(イソップ寓話)
どれいだったイソップは、新しいご主人のところに売られました。その奥さんは、とてもわがままな人で、イソップにもつらくあたっていました。
ある日、イソップは、宴会に呼ばれたご主人のお供をしました。ご主人は、分けてもらったごちそうをイソップに渡しながら、「これを、わたしを家で待っている愛する者に届けなさい」と命じました。
イソップは、家に戻ると、そのごちそうを犬にやってしまいました。
宴会から帰ったご主人が、奥さんに「ごちそうはおいしかった?」と尋ねたところ、奥さんは、「いったいそれはなんのことですか?」と聞き返しました。
ご主人はすぐにイソップを呼んで、問いただしたところ、イソップは、こう答えました。
「ご主人様は、『これを、わたしを家で待っている愛するものに届けなさい』とおっしゃいました。ですから、ちょっと気にくわないことがあると、『離婚します』とおどす奥様ではなくて、なにをされてもおとなしくがまんをして、たとえぶたれても、しっぽを振って、ご主人にしたい寄ってくる犬に、ごちそうをやりました。わたしは、おいいつけどうりにいたしました。」
奥さんは、このことにすっかり腹を立てて、家を出て行ってしまいました。