(14)つばめの父親になった犬・クーパー
ラブラドール・レトリーバーのオス、クーパーは、盲導犬になる訓練を受けていました。
盲導犬としての資質はすばらしいものだったのですが、ただひとつ、ケージに入れられると、うなったり、吠えたりして嫌がるという神経質なところが問題視されて、不適格犬(キャリアチェンジ犬)となったのです。
気むずかしい性格の犬なので、もらい手があるだろうかと心配されたのですが、幸い、すぐに飼い主が決まりました。
飼い主の中間さんに大切にされて、クーパーは落ち着きをとり戻し、うなったり、吠えたりすることもなくなりました。
ある日、散歩の途中で、クーパーが道端に落ちているつばめのヒナをみつけました。ヒナを見つめたまま、地面にふせをして動かなくなったクーパーが、「見捨てるわけにはいかないよ」と言っているようで、中間さんは、つばめのヒナを保護することにしました。
何日かたった頃、買い物から帰った中間さんは、ある光景に驚きました。
伏せたクーパーが、つばめのヒナを自分の前足の先に乗せて、ゆりかごのように、ゆっくりと揺らしていたのです。ダンボール箱の巣から飛び出したつばめのヒナを遊ばせていたのです。
それから、クーパーは、ヒナが巣立つまでずっと遊び相手になっていました。
(参考図書 「盲導犬不合格物語」 沢田俊子著 学習研究社刊)