(11)おおかみと犬とねこ (岩手県の民話)


年とった犬がおりました。犬は、山に住む年とったおおかみと仲がよく、行ったり来たりしておりました。


ある日、犬は、家の人が「うちの犬は、年をとって、なんの役にも立たなくなったから、捨てるか、殺すか、皮を剥ぐかしてしまおう」と話しているのを聞きました。


犬はびっくりして、友だちのおおかみのところに走っていって、「知恵をかしてくれ」と頼みました。


おおかみは笑って、ある作戦を犬に授けました。


家の人たちが、山の畑に行って、赤子を籠に入れて野良仕事をしていると、おおかみがやってきて、赤子をさらっていきました。そのとき、年とった犬がワンワン吠えながら、おおかみを追いかけていき、しばらくすると赤子を取り返してきたのです。


家の人たちは、喜んで、「この犬は、子どもの命の恩人だ」言って、以前とはうって変わって、大切にしてくれるようになりました。


しばらくして、犬は、おおかみのところにお礼に出かけました。ところが、おおかみは、「お前も幸せになったようだから、お礼に明日、大きなにわとりを持って来い」と命じたのです。


その家には、猫も飼われていました。犬がため息をついているのに気づいた猫は、いきさつを聞くと、犬を助けるために翌日、一緒におおかみのところに出かけることにしました。


おおかみは、友だちの鬼に、にわとりと犬を食べてしまおうともちかけて、犬がやってくるのを山のくぼみにひそんで、まちぶせしていました。


くぼみからちょこちょこと動いている鬼の耳を見つけた猫は、それをねずみだと思い、いきなり飛びついて咬みちぎってしまいました。


雲をかすみと逃げ出した鬼の姿を見て、おおかみもあわてて追いかけていってしまいましたとさ。