(8)犬と猫とねずみの話 (ドイツの民話)


ひとりの男に仕えていた犬が、ある日、「おひまをいただきたいのですが」と願い出ました。


男は、犬を思いとどまらせるために、「私のところにずっといてくれたら、お前が年取って働けなくなっても、食べさせてあげる」と言いました。


犬は、その申し出を受け入れることにしましたが、男にその約束を記した書付けをくれるように頼みました。


犬は、受け取った書付けを隠しておけるよい場所が思いつきませんでした。


そこで、親友の猫のところに出かけて、相談すると、猫は「いいよ。しまっておいてあげる」と言って、その書付けを天井裏の梁の後ろに隠しました。


それから長い月日が経って、犬は年をとり、働けなくなりました。ところが、男は約束を守らず、犬を家から追い出そうとしたのです。


犬が、昔の約束を守るように男に伝えると、「そんな約束は知らない。書付けがあるというならそれを見せてみろ」と言い返したのです。


犬から隠してもらった書付けが欲しいと言われた猫は、天井裏に登っていきましたが、書付けはどこにもありませんでした。どうやら、ねずみが食べてしまったようです。


猫が書付けが見つからないことを告げると、犬は怒って猫に襲いかかろうとしました。猫は、急いで逃げて、天井裏に駆け上がると、ねずみを追いかけ始めました。


こうして、犬と猫は仲が悪くなり、猫はねずみを追いかけまわすようになったのです。