(7)犬と神様 (ドイツの民話)


むかし、狩場で犬たちと猟師たちがけんかになりました。しとめた獲物の肉を猟師が取り、犬は骨だけしかもらえなかったからです。


「狩りをするのに、私たちの方がずっとたくさん走っているのに、骨だけしかもらえないなんて、ひどい。当然の権利として、肉を要求する」と犬たちは、言いました。


すると猟師たちは、「当然の権利だというのなら、神様の書付けを見せろ」と言い返したのです。


そこで、犬たちは、利口なプードルのピカスを神様のところに差し向けました。


神様のところに着いたピカスが、成り行きを説明したところ、神様も納得してくれて、「犬も、肉の取り分を受け取るべし」という書付けを書いてくれました。


「ところで、この書付けはどうやって持っていくつもりかね?口にくわえれば、帰り着く前によだれで湿って破れてしまうよ」と神様は、尋ねました。


ピカスは、「シッポの下にはさんで、押えていきます。」と答えたので、神様はピカスのシッポの下に書付けをはさんであげました。


ピカスは、急いで帰路に着きました。


途中、小川の上にかかった木の橋の上に差し掛かったところ、川の中に一匹の犬の姿が見えたので、ピカスは、うれしくて、ついシッポを振ってしまいました。すると、書付けは、川のなかにポチャンと落ちて、流れて行ってしまいました。


ピカスは、すぐに川に飛び込んで、書付けを探しましたが、見つけることはできませんでした。


仲間のところに戻ったピカスは、ことの顛末をみんなに話しました。


それからは、犬はひょっとしたら、誰かが書付けを持っているのではないかと思って、出会うとお互いのシッポの下のにおいを嗅ぐようになりました。


そして、猟師に書付けを見せることができなかったので、今でも犬は骨をもらうだけでがまんしています。