(5)犬ッコと猫とうろこ玉


むかし、あるところに優しいじいさまがいました。


ある日、町からの帰り道で、じいさまは子どもらが寄り集まって、小さな犬ッコをいじめているところに行き会いました。犬ッコの首に縄をつけて、川にどんぶりことつけては引き上げ、またつけては引き上げして、おもしろがっていました。


「やれ、かわいそうに」と、じいさまは、巾着から銭コを出して、犬ッコを買い取り、抱いて家に連れていきました。


大切に育てたので、その犬ッコはじいさまになつき、前からいた三毛猫ともなかよくなりました。


じいさまは、小さな白い蛇も大切に育てていましたが、どんどん大きくなるので、「これだけ大きくなったのだから、もう、とんびや鷹にさらわれることもないだろう。どこか好きなところに行って、一人前になれ」と言いきかせると、白蛇は家を出て、庭の五葉松の根元にある穴にするすると入っていったのです。


じいさまが、「ここが白蛇の巣だったか」と覗いてみると、中に銀色に光るものがあり、それは世にも珍しいうろこ玉という宝物でした。


じいさまは、うろこ玉を持ち帰って、たんすの奥に大切にしまいこみました。あくる日、たんすを開けてみると、うろこ玉から黄金の粒がひとつ湧いて出ていました。それからは、毎日、毎日、黄金が湧いて、じいさまはたいそうな金持ちになりました。


じいさまは、その金を元手に、呉服屋商売を始めたところ、これがまた大繁盛。しかし、ある時、たんすの鍵を預かった番頭が、これ幸いとうろこ玉を盗み出して、どこかに逃げてしまいました。


うろこ玉がなくなると、それまでの繁盛が嘘のように店はさびれ、じいさまは元の貧乏たれに戻ってしまいました。


犬ッコと猫は、逃げた番頭を探しに出かけました。犬ッコが得意の鼻で番頭の足跡をどこまでも追いかけて、とうとう上方で番頭が出した立派な店を見つけだしました。


犬ッコと猫は相談して、まず、猫が店の台所に入って大きな魚を盗って逃げだし、犬ッコが追いかけて、魚を取り返しました。すると、店の女どもは、「この犬ッコは役にたつ、飼ってやれ」と喜んで置いてくれました。


猫は、店のネズミに「助けるかわりに、タンスの中のうろこ玉を持ってこい」と命じました。ネズミは、奥の小ダンスをガリガリかじって、中のうろこ玉を猫のところに届けました。


犬ッコは、うろこ玉をくわえた猫を背中に乗せると、じいさまの家に戻って行きました。ところが、途中で、大きな川を渡ろうとした時に、うろこ玉を川の中に落としてしまいました。


いくら探してもうろこ玉が出てこないので、せめてじいさまへのみやげにと、大きな魚をつかまえて、持って帰りました。


じいさまは、「よく忘れないで戻ってきてくれた。こんな大きな魚までみやげにくれて」と涙を流して、喜びました。


そして、魚に包丁を入れると、どうしても切れないところがあります。身をそいでみると、魚の腹の中からうろこ玉がポロリと出てきました。


じいさまが喜べば、犬ッコも猫も喜んで、一家はまた栄えたとさ。