(3)犬のはじまり (アイヌの昔話)
病い神の姉妹は、お互いに助け合って暮らしていました。
ある時、姉が着飾って出かけました。留守番をさせられていた妹がこっそり後を追ってみると、姉が通った村々では、人々が病気を移されて、死に絶えていました。
そこで、先回りして、ある村に行き着くと、「病気の神が来ています。病の神が嫌いな木を集めて、薬湯を用意しなさい」と伝えました。
村人は、病い神が嫌いな木を集めて、家の屋根に投げ上げたり、戸口に下げ、薬湯を飲みました。
やがてやってきた病神の姉は、その様子を見て激しく怒り、「お前は、人間のところで暮らせばよい」と言って、妹を犬に変えてしまったのです。それが、この世の犬の始まりです。
昔、アイヌ族は、悪い病気がはやると、犬を殺してその肉を食べて、その頭骨を戸口の柱の上に据えて、病気の神たちが家の中に入ってこないようにしたと伝えられています。