(2)四つ目の犬 (インド)


「四つ目の犬は、縁起が悪いので、飼ってはいけない」と言われた時代がありました。四つ目の犬とは、両目の上に、ひとつづつ斑点がある犬のことで、「えんまの犬」だからというのです。


インドでは、四つ目の犬は「ヤマのイヌ」なので、家に置いてはいけないが、食べたいそぶりを見せたら、食物を与えなければならないとされています。もちろん、石を投げたり、叩いたりしてはいけません。


ヤマは、古代インドのバラモン教では、「死の世界」へたどりつく道を最初に見つけた者で、「死の楽園」の主です。日本に伝えられた仏教では、生前の罪を審判して罰を下す地獄の裁判官、「えんま大王」になりましたが、もともとのヤマには、そんな恐ろしいイメージはなかったのです。


バラモン教では、人は死後、ヤマの世界に行き、そこで祖先の霊とともに安らかに暮らすことを理想と捉えていました。


そして、ヤマに付き従って、ヤマの国への道を守っていたのが、2匹の犬「サラメーヤ」でした。


その犬たちは、四つ目で、鼻が広く、体にまだら模様がありました。


犬たちは、人間界にやってきては、死ぬべき人を嗅ぎまわって見つけだし、死の国に連れて行く仕事もしていました。「死の楽園」からの使者なので、四つ目の犬は縁起が悪いと言われるようになったのでしょう。