(7)捜索トレーニング「エアセンティング」


遭難者の役を演じるアシスタントを決めます。このアシスタントが捜索救助トレーニングを成功させるかどうかを決める鍵になると言われます。


犬が人見知りをしたり、不安そうだったり、アシスタントに慣れていない場合には、まず、アシスタントと仲良くなることから始める。

犬がアシスタントに興味を抱き、隠れたところから見つけ出したいという意欲を持たせることができれば、トレーニングは成功する。

犬が遭難者を発見するモチベーションとしては、遭難者からほめてもらうことが最も効果的だと考えられている。


「レベル1 初めてのかくれんぼ」


「探せ」のコマンドで、遭難者を探すことを犬に教える。

ハンドラー(飼い主)が隠れて、アシスタントが犬に「探せ」とコマンドを出す。


このトレーニングは、リードをつけて行う。

人が隠れられる樹木や物陰のあるひらけた場所で、トレーニングを始める。

風が犬に向かって吹き、犬の顔にハンドラーの臭いが運ばれてきていることを確認する。

ハンドラーが犬の前に立ち、アシスタントが犬を押さえる。

ハンドラーは走り去り、犬の見ている前で物陰に隠れる。
走る距離は、最初、犬から15~30メートルぐらいにする。
ハンドラーは飛び跳ねたり、犬の名前を呼んだり、音をたてたりしながら走り、犬に走り去るハンドラーに集中させ、追うように仕向ける。

アシスタントは、「どこ、どこに行っちゃうんだろう」などと犬に話しかけ、犬を興奮させるようにする。

ハンドラーの姿が見えなくなったら、すかさずアシスタントは犬と一緒に隠れ場所まで走り出し、「探せ」のコマンドを繰り返す。

犬がハンドラーを見つけ出したら、ほめてあげる。


このトレーニングは、ハンドラーを探しに行きたいと犬が興奮し、吠え、アシスタントを引っ張るようになるまで続けます。


犬の記憶にこのトレーニングがすり込まれるまで、1日1回として5~6回かかります。このトレーニングは、「探す」という作業の基礎になるものですから、犬をせかせないで下さい。


若い犬の場合には、ハンドラーの隠れている場所にまっすぐに走ってはいかないかもしれません。そんなときには、ハンドラーは犬を呼んで、自分のところに来るように誘って下さい。


犬のお気に入りのおもちゃを使うのも効果的です。おもちゃを持って隠れている人間を探そうとするのは、そのおもちゃに対する犬の愛着心を利用するものです。


「レベル2 初心者のかくれんぼ」


アシスタントが隠れて、ハンドラー(飼い主)が「探せ」とコマンドを出す。


トレーニングのやり方は、レベル1と同じです。


「レベル3 中級者のかくれんぼ」


犬にとってはなじみのない人が、遭難者役をします。

遭難者役は、名前を呼んだり、犬の興味を引くようなことはしないで、静かに立ち去ります。


1. 遭難者が隠れたら、「どこ?どこに行ったの?」と犬に声をかける。

2. 1~2分待ってから、犬を送り出す。(待たせる時間をだんだん長くする。最長5分)

3. 犬にエアセンティングさせるために、遭難者の通ったルートとは違うルートで犬に探させる。

4. ハンドラー自身がジグザグに歩いて、犬に捜索のやり方を示してやる。

5. 遭難者が名前を呼んだり、音(ホイッスル)を出したりしても良い。


「レベル4 上級者のかくれんぼ」


遭難者役が隠れるところを見せずに、ノーリードで探させます。
遭難者役は隠れたら、携帯電話でハンドラーに連絡します。


1. 遭難者は、犬から100メートル程度、離れたところに隠れる。

2. ハンドラーは、風が隠れた場所から犬に向かって吹いていることを確認する。

3. ハンドラーは、「探せ」とコマンドを出す。
「どこに行ったの?」と問いかけて、犬を興奮させることはしない。

4.遭難者は名前を呼んだり、音を出したりしてはいけない。
  犬が嗅覚だけで遭難者を探すようにする。


「レベル5 リファインド」


犬はまっすぐに遭難者のところに行き、すぐにハンドラーの元へ戻り、またまっすぐ遭難者のところにハンドラーを導いていくようになることが理想的です。


遭難者を発見した後で、ハンドラーの元に戻ってくることを教えます。


1. レベル4と同じ状況で犬を捜索に送り出す。

2. ハンドラーは、スタート地点と遭難者との中間地点で立ち止まる。

3. 犬が遭難者の隠れ場所まで来ても、これまでのように犬をほめることはせず、遭難者は犬を無視する。

4. 遭難者は犬を無視し続けながら、犬に発見されたことをハンドラーに携帯電話で伝える。

5. ハンドラーは、すぐに犬を呼び戻す。
犬が遭難者のところにとどまって、戻ってこないときは、犬がハンドラーに集中するまで、犬の名前を呼びながら近づいていく。
犬が戻ってきたら、ハンドラーは犬をほめる。
この時点では、遭難者は隠れ場所から出てきて、犬を一緒にほめることはしない。