マイ・レスキュードッグ・トレーニングの考え方


いきなり捜索救助犬のトレーニングを行なうわけではありません。まず、家庭犬としてのしつけトレーニングが基本です。そして、服従訓練を経て、適性を見極めた上で捜索救助のトレーニングへと進みます。


(1)ファン・トレーニング


犬にとっては、捜索救助のトレーニングは、大好きな飼い主との楽しいゲームでなければならないのです。できなくても決して怒ったり、どなったりしてはいけません。もちろん、体罰などは論外です。一度でも叱ったり、体罰を加えたりしたら、犬は訓練に興味をなくしてしまいます。


ファン・トレーニングは、直訳すれば「楽しい訓練」ですが、犬をほめたり、ごほうびを与えながら訓練する方法です。教えたとおりにできたら、なでて、ほめて、遊んであげる。そうすることで、犬はまた次のことをよろこんでどんどん習得していきます。


ファン・トレーニングは、「オペラント条件づけ」と呼ばれる考え方を基本にしています。「オペラント条件づけ」とは、動物に何かの「行動」をすると餌がもらえるという「結果」を経験させることで、動物が正しい選択ができるようになるものです。動物の学習能力を養うという考え方です。


この「オペラント条件づけ」は、パブロフの「犬の条件反射」に代表される「古典的条件づけ」とは異なるものです。「パブロフの犬の条件反射」は、毎回ベルを鳴らしてから犬に餌を与え続けると、しばらくして犬はベルの音を聞いただけでよだれを出すようになるというものですが、それは生理的な反応であって、学習によるものではありません。


ファン・トレーニングの対極にあるのが、「力による訓練」です。犬は力の強い群れのリーダーに従うものなので、犬を従わせるために、犬に「恐怖心」を与えて支配するという考え方に立つものです。しかし、力によって訓練された犬は、自分より非力だと感じた人間には従おうとはしないのです。そして、時には犬自身の力を誇示しようとさえします。


犬にはもともと備わっている本能的な行動がありますが、ファン・トレーニングでは、それを強化することで、人間が期待する行動ができるようにしていきます。ですから、トレーニングはシンプルで犬にとっても無理のないものです。