(3)捜索救助犬として適している犬種は


欧米で、捜索・救助犬として適性があると評価されている犬種には、ジャーマン・シェパードとマリノア・ベルジアン・シープドッグがあげられます。


どちらも嗅覚が特に優れているといわれる犬種ですが、身体が大きく、体重もあるので、雪の中でも動くことができ、タフであることが評価されています。また、環境への順応性も高く、寒冷地ではほんの数日でアンダーコートが厚くなり、体温を逃がさないようになります。足指の間の毛が少なくなり、足指全体を保護するように広がります。肉球の皮膚は固くなり、凍った道を歩くことに耐えられるようになります。


では、家庭犬の場合はどうでしょうか?


ブルドッグやペキニーズなどの短頭種は嗅覚がそれほど良くはないので、捜索犬としては不向きだと言われます。しかし、脚が短いので捜索救助犬としては向いていないとされるダックスフンドの場合でも、その嗅覚を活かす活動だけであれば、ピンチヒッターになることは可能です。


犬種を問わず、アシスタント・ドッグとして働いているものに聴導犬があります。聴導犬は、聴覚障害者に訪問者のブザーを知らせたり、火事や侵入者センサーを他の音とは区別して「危険!緊急!」と障害者に伝える仕事をする犬です。そのほとんどは、動物保護センターなどからもらわれてきた犬たちで、犬種も育ちも年齢もさまざまです。それでも、彼らは訓練を受けて、聴覚障害者の日常生活をりっぱにサポートしています。


人のために働くアシスタント・ドッグに対して、否定的な考え方をする人たちもいます。「犬を酷使している」、「犬に自由がなくてかわいそうだ」、「無理をさせるので寿命が短いらしい」といったマイナスのイメージをもっています。


しかし、もともと、犬は群れの中で与えられた役割を果たすことで、獲物を分けてもらっていました。つまり、群れのために、リーダーのために役割を果たすことは犬にとっての喜びでもあるのです。何もしないで食べ物を与えられるだけの生活ではなく、与えられた仕事をきちんとこなすことで、ほめられ、飼い主に頼りにされることは、犬にとっても幸せなことなのです。