災害救助犬-「捜索救助(SAR)犬」のトレーニングと認定試験
(1)災害救助犬-「捜索救助犬」の定義
災害救助犬は大きく3つに分けられます。
「山岳救助犬」 山で遭難した人を助ける。
「水難救助犬」 湖や池で溺れている人を助ける。(流れのある川での救助はむずかしい)
「捜索救助犬」 地震による倒壊家屋や土砂災害で埋もれている人を捜し出す。
日本における災害救助犬は、主に地震や土砂崩れなどの災害で、倒壊家屋や土砂に埋もれた人をその嗅覚によって発見する「捜索救助」が主たる目的とされています。
警察犬が人間が地面に残した臭いを追跡するために鼻を下向きに使うのに対して、捜索救助犬は空気中の「浮遊臭」をかぐ(エアセンティング)ために、鼻を上に向けて使います。
捜索救助犬は、「原臭」を必要とせず、複数の捜索チームが動いているような場所でも、捜索作業をすることができます。
捜索救助犬は、人間が緊張したり、窮地に追い込まれた際に皮膚から分泌するにおいを嗅ぎ分けて、がれきの下から人を捜し出すとも言われています。
地震によって倒壊した家屋の下に閉じ込められた被災者の匂いは、すき間を伝って上に昇り、風下に流れていきます。その匂いをキャッチさせるために、指導手(ハンドラー)は、捜索救助犬を風下から現場に近づかせなければなりません。
一般的に捜索救助犬は、被災者のものであろうがなかろうが、人間の臭いをするものなら何でも知らせるように訓練されています。犬と指導手のチームは、リードをつけずにジグザグに捜索して、その範囲にある人間の臭いや人間の臭いがついた物を発見していきます。
犬がジグザグに捜索していく幅は、地形によって異なるものの、少なくとも45メートルの幅を自発的に動きまわることが求められます。
また、小川を渡ったり、倒木や溝のような障害物を越えたり、足場の悪いがれきや岩場を通過しながら、進んでいくことを要求されます。
複数の被災者がいる場合もあり、犬はノーリードで、指導手の遠隔操作を受けて、移動しながら捜索をしなければなりません。また、近くで大型の機械が動いていたり、火災の煙が漂っていたり、人が大声で叫んでいるような災害時の混乱の中でも、それらに動じることなく、捜索を継続することが求められます。