●動物救護センターの運営


阪神・淡路大震災では、神戸や三田に設けられた動物救護センターで、多くの獣医師ボランティアが活躍しました。神戸市内の開業獣医師も多くの動物を保護し、傷ついた動物の治療にあたってくれたのです。


しかし、動物救護センターの運営に関しては、イニシアティブをとった獣医師の組織運営の能力欠如を指摘する厳しい声が上がりました。効率的な組織の構築、ボランティアの統率、人心を掌握するコミュニケーションといったことができないのは、獣医師が組織で動いた経験が少ないからではないかというものです。


被災動物の保護、管理、譲渡を行うためのセンターの運営は、動物愛護団体などの組織が行い、獣医師には獣医療の専門家として、ケガをしたり病気になった動物を治療することに専念してもらう分業体制が望ましいと考えられるようになっています。


阪神淡路大震災では、動物救護センターに収容された犬の50%は、ストレスから体調を崩しました。また、ボランティアがケージから出そうとした時に犬に咬みつかれる事故も多発しました。環境の激変が原因とされていますが、ケージに閉じ込められた生活が少なからず影響していたと考えられるのは、パドック付きの犬舎に移ったとたんに、体調を崩す犬の数が半減したという事実があるからです。


限られたスペースの犬舎に多くの犬を収容しなければならず、感染症の予防のためにも、ケージに入れざるを得なかったのでしょうが、ストレスのかかるケージ以外の管理方法がとられれば、体調を崩す犬を少なくできる可能性もあります。


感染症が蔓延しないようなコントロールは必要ですが、例えば、相性の良い犬何頭かを一緒にして、動き回れるスペースのあるサークルで管理すれば、犬たちの受けるストレスを大幅に軽減できるはずです。


犬たちの手入れや運動などについても、犬のハンドリングを習熟しているスタッフが管理して、一般の動物救援ボランティアの指導を行うことで、咬傷事故を防止することもできます。


被災犬の多くが体調を崩した原因には、食餌の内容が変わったことも大きいと考えられます。生きるか死ぬかの状況ではぜいたくは言えませんが、事情が許すようになれば、ドッグフードだけに依存した食餌ではなく、体調を考えたメニューも取り入れるべきです。