●人は誰でも「自分だけは死なない」と思っている


いつ、どこにいる時に地震が来るかはわかりません。大地震の時に、自分の命を守れなければ、この世とはおさらばですから、震災後の避難や救援活動も関係のない話です。


人は誰でも「自分だけは死なない」と思い込んでいます。


自らの身の安全をかえりみず人を助けようとすることは人命救助の美談として語られますが、それが成功しようと失敗しようと、その行動はリスクマネジメントの考え方では正しいことにはなりません。


救援の専門家である警察官や消防官は、常に自分の安全を確保してから、行動を起こします。しかし、プロであっても危険を避けきれずに命を落とすことがあります。


訓練も受けていない一般の人が自分の命も守れない状況で、誰かを助けに行って命を落とすようなことは、決してほめられたものではないのです。


北海道の有珠山が噴火した時に、残された犬たちを捕獲するため、立ち入り禁止地域に入った保護団体がありましたが、それは人命を軽視した許されない行為なのです。


生きようと死のうと自己責任だから良いではないかということなのかもしれないのですが、その行為が美化されれば、追随する人たちが出て、いつかは命を落とす人が出てしまいます。また、遭難した人を救助するために危険地域に向かった救援隊を2次災害に巻き込む可能性もあるからです。


レスキュー隊員として、まず身につけておかなければならないことは、「自分の命を守る」方法です。


そして、それをできるだけ多くの人に伝えなければなりません。「命を守る」こと以上に大切な救援活動はないからです。