●認知障害の症状


ほとんどの犬は16歳になるまでに次第に脳機能を失うという報告がありますが、典型的な老化現象は、見当識障害(老齢性認知障害)、家庭内での人間関係の変化、トイレの変化、睡眠パターンの変化などがあげられます。


具体的に言うと、16歳になるまでに健康状態やしつけの変化の度合いは別にして、20%の犬が屋内で失禁をし、25%の犬には昼夜逆の睡眠パターンのあらわれなどの変化がでてきて、排泄する様子もないのにイライラしはじめるなどの症状が出ます。また、人間に対する興味が全般的に薄れていきます。


最終的には、70%以上の老犬は散歩に出かけるときに出口を間違える、部屋の隅から動かなくなる、空を見つめる、理由もなしに吠え始めるなどの老齢性認知障害(見当識障害とも呼ぶ)の症状を示します。


その他にも、次のような症状が出てきます。

 食餌を食べても食べても欲しがる(食欲の異常)

 飼い主を認識したり、命令を理解できない

 何に対しても無反応で、うつむいて円を描くようにクルクル回りだす


円を描いてクルクル回るという回転運動は、犬に特有の認知障害の行動です。回るスピードがだんだん早くなるにつれて円は小さくなり、最後には前肢の関節を支点にして、床に体をこすりつけるように回るようになると、床と擦れたところの皮膚が破れて、出血することもあります。


このような症状を表すと、以前の愛犬とは違う犬になってしまったように感じて、ショックを受ける飼い主が少なくありません。


「犬の老いじたく-愛犬の老化と向き合うために」 中塚圭子著 角川SSC新書


子犬叱るな 来た道だもの

老犬笑うな 行く道だもの

来た道行く道 二人旅

これから通る 今日の道

通り直しのできぬ道



犬の老いじたく