老齢性認知障害(痴呆)


●なぜ、認知障害になるのか


老齢犬の脳にも人間の老人と同じように、脳血管にアミロイドという不溶性たんぱく質が沈着する「アミロイド変性」が多く見られます。


このような脳内の血管が正常でなくなる脳血管変成は、老化とともに全ての犬に起こりますが、全てが認知障害になるわけではありません。


犬の認知障害は、老化によって脳神経細胞の活動が衰え、さらには知性や感情、運動をコントロールする神経の機能が低下したことで起きます。


全盛期の犬では、脳から発せられた情報は1秒間に約6,000mのスピードで伝達されますが、老犬になるとそのスピードは1秒間に約1,300mまで下がります。


そして、脳の機能が低下し、脳の血管は伸縮性を失い、肺機能も低下してきます。すると脳は十分な酸素の供給を受けることができなくなり、記憶や学習の機能が低下すると考えられます。


はっきりした定義はありませんが、「加齢に伴う生理的な神経細胞の脱落及び神経機能障害」となります。


犬の神経系は、中枢神経(脳、脊髄)、末梢神経(知覚神経、運動神経)、自律神経からなっています。それらの脳神経細胞は、18~20年で死滅するといわれます。ですから、人間の70歳に近い、13~15歳くらいになると、ボケ(痴呆)の症状が出てもおかしくないようです。


痴呆はオス犬に多く、痴呆犬の70%は、柴犬及びその雑種が占めていると言われます。


なぜ、日本犬の柴犬に痴呆が多いのかは、日本犬は昔から魚を多く食べてきたので、魚油などに含まれている不飽和脂肪酸のDHAやEPAなどの要求量が洋犬に比べて多いためではないかという研究報告がされています。


つまり、不飽和脂肪酸を多く必要とする体質なので、脳の神経細胞を活性化させるために使われる不飽和脂肪酸が不足してしまうからではないかというものです。


老齢犬の脳を調べると、脳全体が縮んだ結果、脳質がとても大きくなっていることがあります。また、脳組織を顕微鏡で調べると、老人の脳と同じように「老人班」というシミがたくさん見えます。


年をとると、脳から排出されるホルモンと、神経系統でつくられる神経内分泌物質の生産量が減少します。


特に脳で生産されるドーパミンと呼ばれるホルモンの生産量は急激に低くなります。ドーパミンは脳の機能を支配するホルモンで、その減少が脳機能の低下原因と考えられます。