老犬の介護


●老化に伴う生理的変化


皮毛 : 

皮膚は柔軟性を失って過度に角質化し、毛は色素を失って白髪になります。犬では白髪は主に鼻面や顔面に生じます。

皮膚ガンが発生しやすくなるのは、平均して犬では10~12歳です。


消化器 :

機能的に消化率や代謝の効率が低下するほかに、歯が悪くなり唾液分泌が低下するため、食餌の摂取量も減少します。また、結腸の運動性が低下するので便秘しやすくなります。


泌尿器 :

腎不全は老犬の死亡原因の上位に位置します。
老犬では腎不全の症状が出るまでに「ネフロン」の75%が消失しています。ネフロンは、腎臓の機能単位で、濾過作用を行う腎小体と再吸収を行う尿細管に分けられます。一見、健康そうに見えても老犬では腎機能が衰えているのです。


腎臓の主な機能は、血液が運んでくる体内の老廃物をろ過して、尿として体外に排泄することです。その仕事を担っているのが「糸球体」と呼ばれるものです。糸球体は、腎臓のネフロン(腎単位)の中にあって、ネフロンは1個の腎臓に、犬の場合には約40万個あるとされています。


糸球体は、生涯にわたって、少しづつ失われていくので、加齢とともに、腎臓の機能も失われ、元に戻ることはありません。これが「慢性腎不全」です。


腎不全の初期症状は、多飲多尿=水をたくさん飲み、尿もたくさん出る、尿の臭いが変化する、尿の色が薄くなる(尿比重の低下)などです。


進行すると、食欲が低下したり、嘔吐する、やせる、貧血を起こす、被毛の艶がなくなったりします。口の中に腫瘍ができたり、アンモニア臭の口臭がするようになると「尿毒症」の症状です。末期になると、ほとんど眠っている状態(嗜眠)になり、尿毒症による痙攣を起こすこともあります。


筋骨系 : 

老化は筋肉量と骨量を減少させます。一般に関節炎が増加します。

肥満は関節炎を悪化させる原因になりますが、一方では、痛みで食欲が減退して、筋骨量の減少につながります。


循環器 : 

老化に伴って、心拍出量が減少して不整脈が増加します。

また、血管の硝子膜(しょうしまく)が厚くなって、動脈の内膜や中膜にカルシウムが沈着する結果、心臓に負担が増えて、心疾患を生じます。

老犬、老猫の30%が心疾患を持っているといわれます。


感覚器 : 

老化は刺激に対する反応を低下させ、視覚、聴覚、味覚の感覚機能も減退します。

味覚が鈍化すると食餌に対する興味も失うので、摂取量が減少します。また、特定の味や匂いの食餌しか受け付けなくなることもあります。


順応性 :

引っ越したり、新しいペットが飼われるといったような環境の変化があると、老犬は、過食や食欲喪失といったストレス症状をみせることがあります。これらは、老化が環境の変化に対する順応性を失わせることが原因です。