●アロマエッセンスは、濃縮された時点でもはや自然のものではない
「できるだけ、自然に」と言うことで、ノミを予防するのにミント系ハーブを使ったり、ペットへのアロマテラピーを提供するサロンも増えています。
しかし、人間の数千~数百万倍も鋭敏な嗅覚を持っている犬には、人間にとっていくら素晴らしい香りのものでも、それを体につけられることは、かなりのストレスになります。
動物は、匂いによって、仲間とよそ者とを判別しています。フェレットは、じゃこう臭と呼ばれる独特の体臭をもっていますが、シャンプーされたフェレットは、ケージに戻された後で、しばしば仲間から攻撃されることがあります。知らない匂いの奴が入ってきたというわけです。しばらくして、体臭が戻ってくると元通りになるそうです。
猫には、アロマテラピーは危険性が高いとされています。ストレスだけではなく、実際に著しく体調を崩した例が報告されています。アロマエッセンスだけではなく、キャンドルなどのアロマ系商品の使用にも、警鐘が鳴らされています。
猫は、アロマエッセンスの分子に対して代謝機能が働かないので、アロマの香り分子が解毒されることなく、肝臓に蓄積されてしまうからです。
「外科的な治療は避けたい、医薬品の副作用が心配だから」ということで、自然治癒力で直したいという考え方を否定するものではありませんが、天然由来のものでも、それを作るまでに人の手が加えられていれば、それはすでに自然のものではありません。
アロマエッセンスは、植物由来の抽出液ですが、自然界には存在しない濃度のもので、濃縮された時点ですでに自然のものではなく、人の手が加えられた人工物に他なりません。
「自然の植物から抽出されたものだから安全なのだ」という思い込みは危険です。エッセンシャルオイルは非常に高濃度なので、使い方を誤ると危険です。
犬に使用する場合、最も大切なことは、個々のオイルの薬学的効果と適切な使用量(希釈濃度)を十分に理解していることです。
塗ったオイルを犬がなめても安全なものを使います。しかし、安全なものでもたくさんなめると、口の中や消化器系の粘膜を痛めたり、肝臓などの解毒作用を持つ器官に負担がかかります。
1. 必ずパッチテストを実施する。
皮膚のうすい部分に塗って、15分以上経ってから皮膚にアレルギー反応がでていないことを確認する。敏感な個体では、48時間経過後に遅延型のアレルギー反応が起きることもあるので、最初は、最小の有効濃度で使用する。
2. 妊娠中の犬には、行わない。
ヘルパーT細胞には、Ⅰ型(th1)とⅡ型(th2)があり、アレルギー反応にはth2が深く関わっている。妊娠すると、Ⅰ型が多くなり、いろいろな刺激に対してアレルギー反応が起こらないような仕組みが作られる。妊娠中にエッセンシャル・オイルを使うとその化学物質に影響を受けてⅡ型(th2)が増えて、胎児にも悪影響を及ぼす可能性がある。
3. 8週齢に満たない子犬には行わない。
生まれてまもない子犬では、ヘルパーT細胞のⅠ型が優性なので、アレルギー反応を誘発する可能性がある。