●犬がアロマ(芳香)を嗅ぐとどうなるのか


欧米では、匂いが犬の行動パターンに影響を与えることから、犬の精神的なコントロールにアロマやフェロモンを利用する試みがされてきました。


しかし、人間が好む匂いでも、犬が嫌がるものもあります。日本人が好むオレンジやレモンなどの柑橘系の香りを苦手とする犬は多いのです。


エッセンシャルオイルを1%くらいに薄めたものを犬の鼻の近くに持っていくと、気にいった香りの場合には、積極的に嗅ごうとしたり、舐めようとしたり、追いかけてくるといった行動が見られます。


好きではない香りには、顔をそむけたり、逃げ出したり、くしゃみをしたりします。


人間の心に安らぎをもたらしてくれると言われるアロマやハーブの香りが、犬の神経を刺激して、神経的な疾患を引き起こす原因になることもあります。部屋に置かれていたポプリを口にした犬の様子がおかしくなり、それが2~3日続いたという話もあります。


エッセンシャルオイルを嗅ぐと、成分に含まれる「テルペノイド」は、鼻の奥の嗅覚神経から脳の大脳辺縁系を経由して、免疫、ホルモン、自律神経をコントロールする視床下部に達し、GABA受容体を活性化します。


GABAは、胚芽米に多く含まれる健康食品としても有名ですが、「α-アミノ酪酸」という抑制性の神経伝達物質です。それが活性化することで、血圧が下降する、不安が和らぐ、眠りを誘うなどの効果が表れるのです。


呼吸で肺に吸入されたエッセンシャルオイルの成分は、血管に入って、血流の流れに乗って、脳に達します。脳関門を難なく通過して、中枢神経に直接作用します。


人間にはここちの良い、ほのかな香りのものでも、嗅覚の鋭い犬にとっては、強烈な香りになっているのです。アロマやハーブが全ていけないというのではありませんが、「人間に良いのだから」と安易に犬にも使うことは勧められません。