●皮膚病と薬用シャンプー(医薬部外品)


犬の皮膚病には次のようなものがあります。


・寄生虫(疥癬やニキビダニ)によるもの

・真菌(皮膚糸状菌やマラセチア、カンジダなど)によるもの

・細菌によるもの

・内分泌疾患からくるもの

・腫瘍性のもの

・アレルギー疾患


高温多湿になる夏場には、細菌感染による急性湿性皮膚炎が多くなります。治療法は、細菌に対する抗生剤の内服と外用ですが、化膿している患部には抗生剤が浸透しにくいので、患部をきれいにするために薬用シャンプーによる洗浄を行います。


急性湿性皮膚炎は、細菌感染が原因ですから、殺菌力のあるシャンプーが使われます。病変が激しい場合には、毎日あるいは隔日でシャンプーをします。皮膚病のときにシャンプーをしてはいけないのではないかと思いがちですが、人間のアトピー性皮膚炎の治療でも、基本は皮膚の清浄といわれているのです。


細菌性の皮膚病ではなくても、皮膚を清浄に保つことは、細菌による二次感染を防ぐことにもなるので、シャンプー療法は有効です。


薬用シャンプーには、たくさんの種類があり、症状に合わせて組み合わせて使うこともあります。


・保湿性シャンプー

・角質溶解性シャンプー

・脂質溶解性シャンプー

・抗菌性シャンプー


薬用シャンプーの効果は、次のようなものです。


・毛穴を洗浄する

・殺菌

・ベタツキを抑える効果

・乾燥してパラパラとしたフケを抑える効果

・かゆみを抑える

・保湿効果

・駆虫効果

・コンディショナーあるいはリンス効果


獣医師は、皮膚病の症状と皮膚の性質に合わせて、適切な薬用シャンプーを選ばなければなりません。その選択をまちがえると、かえって症状を悪化させてしまうこともあるからです。


シャンプー療法は、皮膚を清潔にして、過剰な皮脂や角質を除去したり、被毛と角質への保湿効果などで、皮膚の状態を良好にすることで、治療の一助にするものです。


症状に合わせたシャンプー療法はそれなりに効果がありますが、薬用シャンプーは、その使用法をまちがえると症状を悪化させる場合もあります。強い脱脂作用や角質溶解作用を持つシャンプーなどは、適正な使用法を守らなければなりません。


・寄生虫には、駆除効果のあるシャンプーを使用する。


・皮膚糸状菌感染には、飲み薬と塗り薬を併用しながら、殺菌性シャンプーを使用する。


・細菌やマラセチア(真菌)感染には、毛穴を洗浄するシャンプー、殺菌性シャンプー、保湿シャンプーを併用。マラセチアが繁殖しないように、体のベタツキを抑えるシャンプーを使用することもある。


・細かいフケが出る乾性脂漏症には、フケを抑えるシャンプーから開始し、効果がなければ、保湿効果のあるシャンプーも併用する。


・皮膚に少し赤みが残っていたり、かゆみだけがあるアトピー性皮膚炎の初期症状には、保湿効果のあるシャンプーで、ひんぱんに洗う。食餌療法も併用する。


トリクロサン、塩化ベンザルコニウム、酢酸クロルヘキジンなどの殺菌剤が含まれている薬用シャンプーを、皮膚病が治癒した後も使い続けることは好ましくありません。酢酸クロルヘキシジンは低刺激性の殺菌剤ですが、それを日常的なシャンプーとして使うことも勧められません。


酢酸クロルヘキシジンは、細菌性皮膚炎(膿皮症)などの治療に使用されるものです。日常的に殺菌剤入りのシャンプーを使えば、皮膚を健康な状態に保つ働きをしている皮膚常在菌まで殺すことになるので、皮膚にとっては決して良いことではありません。


薬用シャンプーでの洗い方


1. 皮膚に負担がかからないように、30℃以下のぬるま湯を使う。


2. 体全体を濡らしてから、薬用シャンプーを皮膚に染み込ませるようにしながら泡立てて、皮膚をよくもみ洗いする。


3. シャンプー液を付けたままの状態で10分ほど放置する。


4. その後で、よくすすぐ。


5. 皮膚病の症状によっては、自然乾燥したり、扇風機などの冷風で乾かす場合もある。


皮膚トラブルを起こしやすい犬種


・アレルギー性皮膚炎

シー・ズー、柴犬、レトリーバー種、キャバリア・キングチャールズ・スパニエル


・膿皮症、毛包炎
フレンチ・ブルドッグ、パグ、シェットランド・シープドック


レトリーバー種やシェットランド・シープドックは、甲状腺機能低下症による脱毛や毛根の発育サイクルの異常が出やすいと言われます。