●界面活性剤が汚れを落とすメカニズム


汚れには、水やぬるま湯で洗い流せるものもありますが、皮脂にくっついてしまった汚れは、水洗いだけでは取り除けません。油(脂)と水は、それぞれに表面張力があるので、交じり合わないからです。


界面活性剤は、簡単に言うと、水と油を混ぜ合わせる物質で、食品にも使われています。


牛乳は、水の中に脂肪の細かな粒子が乳化して分散している液体です。牛乳は水と脂が混ざっている液体ですが、置いておいても水の相と脂の相に分離することはありません。なぜなら、牛乳に含まれている天然のタンパク質が界面活性剤の働きをしているからです。


マヨネーズは植物油と卵黄とお酢からできている加工食品ですが、卵黄のレシチンが天然の界面活性剤の働きをして、分離を防いでいます。


食品に使われている界面活性剤は、「乳化剤」という呼び方で成分表示されています。


食品衛生法で、食品に添加することが許されている乳化剤には、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンなどがあります。


これらは合成の界面活性剤ですが、人体への安全性に問題がないということで、使用には制限がありません。(ステアロイル乳酸カルシウムも認められているが、使用制限がある。)


界面活性剤の分子は、油脂分と結合しやすい「親油基」と、水と結合しやすい「親水基」の相反するふたつの性質をもっています。体の半分が油と性質が似ていて、もう半分は水と性質が似ているので、脂汚れを取り囲んで小さな粒にして、水の中に散らすことができるのです。


親水基には、「アニオン」と呼ばれるマイナスの電気的な性質があって、無数のアニオンが脂汚れに付着して包んで、ミセルと呼ばれる小さな粒にします。そのミセルが泡の中に取り込まれ、泡をすすぐことで、ミセルごと汚れが洗い流されるのです。


界面活性剤のはたらきの一つに起泡という作用があります。洗浄は、固体と液体の間の界面で起きる現象なので、液体と気体の間の界面で起きている泡立ちは、洗浄とは直接的な関係はありません。しかし、洗浄液が良く泡立っている状態は、洗浄力が発揮される目安にはなります。