●犬から生じる臭い

1.常在菌の増殖による皮脂の分解臭


人間と同じように、犬の皮膚の表面にも、1c㎡あたり約20万個に及ぶ数種類の常在菌がバランス良く存在していると言われます。これらの常在菌は、紫外線や有害物質から皮膚を守ってくれたり、病原菌が身体の中に入るのと防いだりしてくれています。

皮膚常在菌は、皮膚の脂肪分(皮脂)や垢などに含まれる「低級脂肪酸}(靴の悪臭などのイソ吉草酸)をえさとして食べながら、脂肪酸を排出しています。皮膚が弱酸性になるひとつの要素です。皮脂と皮膚常在菌とのコンビネーションが、皮膚を保護し、病原菌の感染などを防いでいるのです。


皮膚常在菌のひとつに、マラセチア・フルフルという真菌があります。皮脂の分泌が増えると、それを栄養分として異常に繁殖し、皮膚に炎症を起こします。


表皮の角質が作られるスピードが速くなるので、古い角質がどんどん剥がれるため、フケ症になります。フケには、タンパク質が豊富に含まれているので、雑菌のかっこうのエサとなり、有害菌やカビが繁殖して、臭いをつくります。


2.全身に分布している「アポクリン汗腺(大汗腺)」から分泌されるアポクリン汗


人間の場合、アポクリン汗腺は脇などにあるもので、その臭いは性的な刺激になると言われています。犬の場合、アポクリン汗腺は全身にあり、体温調節にも関係していると考えられています。


アポクリン汗は弱アルカリ性で、中性脂肪、脂肪酸、コレステロールなどの脂質のほか、鉄、色素、細胞破壊成分などを含んでいます。


アポクリン汗だけで強い臭いになることはありませんが、皮膚に常在する菌が、汗に含まれる有機成分を臭気成分に変えるため、独特の臭いを発すると言われます。


3.古い皮脂が酸化すると臭くなる


皮脂が被毛にこびりついて毛穴の出口を塞いでしまうと、皮脂腺で生成された新しい皮脂は、皮脂腺内や毛穴に詰まってしまいます。排出されない皮脂は、いずれ酸化して、臭いを発するようになります。


こびりついた皮脂を放置しておくと、皮膚の血行が阻害されて、被毛の成長を妨げる原因にもなります。


4.被毛は、臭い分子を集めて濃縮し、臭いを発散する


被毛そのものは、硬いキューティクルで覆われているので、それ自体が臭いの元になることは、ほとんどありません。しかし、被毛は、臭いの分子を集める「集臭器」なのです。


被毛は、まず、空気中に浮遊している臭いを吸着します。と同時に、皮膚から発生した臭いも吸着します。内と外からの臭いをダブルで吸着して、濃縮してから、発散するのです。