●表皮
皮膚は、「表皮」、「真皮」、「皮下組織」の3層構造に大きく分けられます。
表皮は、外界に接する一番上の皮膚の層で、「保湿機能」と「バリア機能」といったふたつの大切な役割を果たしています。
人間の表皮の厚さは0.1~0.3mmですが、犬の表皮はずっと薄く0.025~0.04mmしかありません。
表皮は、主要な細胞のケラチノサイト(表皮角化細胞)の他に、メラノサイト(メラニン色素を産生する色素細胞)、ランゲルハンス細胞(免疫を担う)などで作られています。
ケラチノサイト(表皮角化細胞)は、細胞が死んでいく「角化」というプロセスをもつ特殊な細胞で、。そのプロセスは4段階に分かれています。
第1段階 基底層 -基底細胞-DNA合成を行い、分裂・増殖する
第2段階 有棘層 -有棘細胞
第3段階 顆粒層 -顆粒細胞-脂質(セラミド、コレステロール、脂肪酸)のバリア機能
第4段階 角層 -角層細胞-天然保湿因子(NMF)による水分保持機能
第5段階 アカ
皮膚には、水分、天然保湿成分(NMF)、脂質(コレステロール、セラミドから分泌)があって、それらのバランスが皮膚の健康に大切な役割を果たしています。
この3者のバランスをモイスチャー・バランスと呼びます。
1.保湿機能
適度な水分(20~30%)を含有することで、皮膚に柔軟性を持たせ、なめらかな肌を守ります。
その役割を担っているのが、天然保湿因子(NMF)と呼ばれる水溶性の成分です。その主成分はアミノ酸、あるいはピロリドンカルボン酸などのアミノ代謝物で、表皮(角質層)に含まれるアミノ酸の量が少なくなるほど、皮膚が乾燥することになります。
2.バリア機能
セラミド、コレステロール、脂肪酸は、体内の水分を外に逃がさないようにしながら、外から異物が体内に侵入するのを防ぐ働きをします。ランゲルハンス細胞は免疫の監視役、メラニン色素は紫外線の防御機能を果たしています。
皮膚の角化細胞をレンガに例えると、セラミドはレンガとレンガの間のセメントのように、細胞と細胞の間を埋める物質で、皮膚のバリア機能を果たしています。
セラミドが多いということは、保湿性に優れ、紫外線、ホコリ、アレルゲンなどの侵入にも抵抗力があるということです。赤ちゃんの肌がプルンプルンなのは、セラミドが多いからです。セラミドは、加齢とともに、あるいはストレスでも減少します。
人や犬のアトピー性皮膚炎では、慢性的に皮膚のセラミドが不足していて、肌が乾燥し、皮膚のバリア機能が弱くなっているために、細菌やウィルスに感染しやすい状態になっています。
セラミドやコラーゲンの量が先天的に少ない犬がいて、「アトピックドライスキン」と呼ばれています。皮膚の水分を保持できず、乾燥しゃすいため角質層が傷んでアレルゲンが侵入しやすく、アレルギーになりやすいとされています。
犬には、9種類のセラミドが確認されていますが、これらのセラミドを補うことで、皮膚の乾燥を防ぎ、かゆみを抑え、アトピー性皮膚炎を改善できると考えられています。