●アミノ酸の電気的性質とPHの関係
アミノ酸は電気的性質から3つのタイプに分けられています。
(A)塩基性アミノ酸
プラス(+)の電気をもっている。アルギニン、リジン、ヒスチジン
(B)酸性アミノ酸
マイナス(-)の電気をもっている。アスパラギン酸、グルタミン酸
(C)中性アミノ酸
電気的には中性。シスチンをはじめとするその他の14種類のアミノ酸
ケラチンタンパク質を作っているアミノ酸の中で、最も含まれている量の多いのがシスチンです。硫黄を含んでいるアミノ酸なので、含硫アミノ酸とも呼ばれます。毛が焦げたときの独特の臭いはこの硫黄成分が焼けたためです。
シスチンは、システインというアミノ酸がふたつつながったものです。皮膚のケラチンタンパク質には3%しか含まれていないシスチンが、被毛には16.6~18%も含まれています。
被毛が最も安定しているPHは4.1~4.7で、弱酸性の状態です。タンパク質は酸に合うと引き締まる性質があるので、酸が被毛のキューティクルに触れると、キューティクルは引き締まって、毛の内部に酸が入り込むのを防ぎます。
被毛は、PH4.5~6.5の弱酸性の皮脂膜で覆われています。この皮脂膜は、皮膚の表面で皮脂と小汗腺から出た汗が混じってつくられたもので、被毛のキューティクルの毛細管現象で毛先まで伝わっていったものです。アルカリ性のものが付いても、この弱酸性の膜がアルカリを弱めて、毛髪を保護します。
1本の被毛は、十数万本の繊維がキューティクルに包まれているものです。繊維どうしがバラバラにならないようにくっつけているタンパク質の縦のつながりを「主鎖」と呼びます。繊維どうしの横のつながりを「側鎖」と言います。
側鎖結合には、4種類あります。
1.水素結合
縦のつながりの主鎖と主鎖の間にある水素と酸素が引きつけ合う結合で、水に濡らすだけで簡単に切れるが、乾くと再びつながる。
2.塩結合(S-S結合)
アミノ酸には、酸性、中性、アルカリ性の3種類あるが、酸とアルカリが結合することを塩結合と呼ぶ。「塩結合」あるいは「イオン結合」は、プラス(+)の性質を持つ3種類の塩基性アミノ酸とマイナス(-)の性質を持つ2種類の酸性アミノ酸とが結合したもので、それらが互いに結びつくポイントを「等電点」(アシッドバランス)と言う。
(+)と(-)がバランスをとる等電点は、PHで表すとPH5前後の弱酸性の状態です。健康な被毛は、PH4.1~4.7の弱酸性の状態が、最も引き締まって、弾力性、強度が最高になります。また、表皮のキューティクルも整然と並び、美しいツヤのある被毛になります。
そのバランスが崩れて、被毛がアルカリ性に傾くにつれて、「塩結合」や「水素結合」が切断されます。すると、繊維組織を引き締めている「側鎖結合」も切れるので、被毛の組織はふやけた様な状態になります。この状態を膨潤と呼び、被毛は傷つきやすくなります。
3.シスチン結合
被毛の主要成分であるシスチンというアミノ酸は、システインというアミノ酸がふたつ結合したもので、還元剤(チオグリコール酸の塩類)で切り離され、酸化剤(臭素酸ナトリウム・臭素酸カリウム)で復元する。この仕組みを利用しているのが、コールドパーマネントウェーブ剤。
4.ペプチド結合
主鎖と同じタンパク質のつながりで、非常に丈夫な結合。