●被毛の構造
人でも動物でも1本の毛は、3層から成り立っています。中心部が「メデュラ」、その外側に「コルテックス」、そしていちばん外側が「キューティクル(毛表皮)」と呼ばれます。
1.キューティクル(毛表皮)
毛の一番外側にある表皮で、硬いタンパク質が主成分です。キューティクルの最も外側はエピキューティクルと呼ばれます。半透明のうろこ状のものが平たく4~10枚重なって、被毛をぐるっと囲んで内側の組織を保護する役割を果たしています。髪の艶や感触に影響しています。
キューティクルが多いほど、毛は硬くなります。キューティクルはブラッシングやシャンプーで傷ついたり、剥がれやすくなったりします。白い毛は、濃い色の毛よりもキューティクルが少ないと言われます。キューティクルはPHによって開閉し、アルカリ性になると開き、酸性になると閉じます。毛染め液は、強いアルカリ性でキューティクルを開いて、そこからカラーを髪に浸透させます。
傷んだ被毛は、このキューティクルが開いてボロボロになった状態です。隣り合った髪がこすれると静電気が発生し、被毛が突っ立ったようになってしまいます。
2.コルテックス(毛皮質)
表皮のすぐ内側の組織で、毛の85~90%を占め、細かな繊維状のタンパク質が主成分です。この部分のタンパク質、脂質、水分量が、毛の弾力性や太さに影響します。毛の色を決めるメラニン色素も含まれています。
3.メデュラ(毛髄質)
毛の芯にあたり、髄質と呼ばれます。やわらかなタンパク質と脂質が主成分です。空洞があって、その中は空気で満たされています。この空気の層が断熱、保温の役割を果たしています。
人の場合は、一般的には太くて硬い髪ほどメデュラの量が多くて、細くて軟らかい髪ほどメデュラの量は少なくなります。赤ちゃんの毛やうぶ毛のような細い毛にはメデュラはありません。
メデュラの多い毛髪の方がパーマがかかりやすく、少ないほどかかりにくいと言われます。
人間のメデュラの幅は毛の全径の1/3以下ですが、動物のメデュラの幅はそれよりも太いので、理論的には人間よりも犬のほうがパーマがかかりやすいということになります。
寒冷地の動物の毛を調べてみると、メデュラが50%を占めています。メデュラにある空洞に溜まっている空気が保温の役目を果たしているのです。ちなみにラッコがプカプカ浮けるのは、毛に含まれているこの空気の浮力のおかげだそうです。
透明な毛の内部が空洞になっているため、可視光線のほとんど全てが反射するので、白く見えるのです。そのため、空から赤外線カメラで撮影しても、シロクマは写りません。
中が空洞になっている被毛は、15センチぐらいのつやつやした硬い上毛と、5センチくらいの密生した下毛の二層になっていて、体温を保つ役目を果たしています。水に濡れても、凍りつく前に、ストローのような硬い上毛から、簡単に水滴を振り払うことができます。