被毛の構造
●被毛の生成と成長
ひとつの毛孔から複数の毛が生えている様子を「毛束」(もうそく)と呼びます。
毛束の中心には、太くて長い主毛が1、2本あって、それを囲むように細い副毛が2~16本ほど生えています。
ダブルコートは、主毛と副毛が揃っている被毛で、シングルコートは副毛の少ない被毛のことです。
皮膚の面積1c㎡当りでの毛束の数は、ダックフンドやプードルでは400~600個、ジャーマン・シェパードやエアデール・テリアでは100~300個とされています。
被毛は、皮膚組織の中にある「毛根」と、地肌から外に出ている「毛幹」からできています。毛として認識されているのは、外に出ている「毛幹」の部分です。
皮膚の内部の毛球にある「毛乳頭」が、「毛母細胞」に指示を出し、それを受けて毛母細胞が分裂を繰り返して、新しい細胞が古い細胞を押し上げながら成長していきます。
毛母細胞は体の中でも最も活発な細胞で、大量の栄養や酸素を必要としています。地肌の血行を良くすることで、栄養や酸素が毛細血管から運ばれてきて、毛母細胞の分裂を助けます。
被毛は、毛先が伸びるのではなく、下から上に押し上げられる形で成長しているのです。
古い細胞は、上に押し上げられるにつれて、角化(ケラチン化=細胞が水分を失うこと)して、毛幹になります。毛幹は、いわば死んでいる細胞のかたまりのようなものなのです。
被毛は爪と同じように、皮膚の角質層が変化してできたものですから、科学的には肌の一部です。
しかし、被毛は、すでに死んだ細胞ですから、自己修復機能がありません。
被毛は、発生してから「成長期」→「移行期」→「休止期」を経て、抜け落ちて行きます。
被毛の成長周期は、極短毛では短く、絹状毛では長いことが知られています。例えば、成長期が7ヶ月とされる柴犬に対して、ヨークシャー・テリアでは2年間という報告もあります。
また、被毛の成長には日照時間が関係していて、日照時間が長くなる春先には、被毛の成長率が高くなります。
一般的に、1日で、被毛は平均して0.18mm成長すると言われますが、長毛種ではその倍近く伸びることも分かっています。