●被毛には、寒さだけではなく、暑さも防ぐ役割がある
寒い海で暮らすアシカやアザラシなどの海獣類は、寒さから身を守るために、全身に分厚い脂肪層があります。
ラッコには、そんな分厚い脂肪層はありませんが、水温15℃以下の寒さに耐えるために、2層の毛を身にまとっています。
ラッコの毛は、長くて太い「刺し毛」とその根元にある短くて柔らかい「綿毛」が、1c㎡当りで10~14万本という密度で生えています。その密度は、同じイタチ科のミンクの4倍、人間の頭髪の数百倍と言われていて、ラッコは、その高密度な2層の毛の間に空気の層を作ることで、寒さから身を守っているのです。
犬もオーバーコートとアンダーコートの2層の毛で、寒さから身を守っています。
アンダーコートは、主に寒さから犬を守る役割をしていますが、オーバーコートは、寒さだけではなく、皮膚を直射日光や虫などから守る役割も果たしています。
夏の暑さ対策は、アンダーコートから不要な毛を取り除いて、毛量のボリュームを減らすことにとどめた方がよいという意見があります。
被毛を短くカットすることが、衛生的な観点や長すぎるコートの手入れを簡単にするためというのであれば別ですが、暑さ対策としてサマーカットをすることは、犬をさらに暑さに弱くしてしまう可能性があるからです。
サマーカットしてオーバーコートまで刈り込んでしまうと、強い陽射しをさえぎる働きをするパラソルを取り除いてしまうようなもので、熱い外気温がそのまま皮膚に伝わります。また、紫外線もじかに皮膚に届くので、体にダメージを与えるからです。
アンダーコートの不要な毛を取り除くことは、皮膚病予防にもなります。死毛は、水分を吸収しやすく、絡まった毛の下の皮膚は湿っぽくなっていて、細菌にとっては増殖するのにもってこいの環境になります。
被毛は、外の環境と犬の体内の間のバリアーの役目を果たしていますが、体にたまった過剰な熱が外に逃げにくく、熱中症を引き起こしやすいという指摘もあるので、被毛を短くカットするのなら、炎天下での散歩はせず、早朝や日がかげった夕方だけ犬を屋外に出すというような配慮が必要になります。