寄生虫の駆除


●フィラリアの予防


1.フィラリア(ディロフィラリア・イミティス/犬心臓糸状虫症)とは


オス虫は体長12~20cm、メス虫は25~30cmにまで育って、心臓や肺動脈に寄生する寄生虫で、感染すると治療がむずかしく、寿命を短くしてしまいます。


フィラリアは蚊を中間宿主として感染します。日本ではトウゴウヤブカとヒトスジシマカが上げられています。


蚊が犬を吸血すると、末梢血中のミクロフィラリアが蚊の体内に取り込まれます。ミクロフィラリアは蚊の体内で2回脱皮して発育し、約2週間で体長1mmの幼虫となります。


そして、蚊が再び犬を吸血するときに、蚊の吻からフィラリアの幼虫が現れ、吸血時の傷口から犬の皮下に侵入します。幼虫は犬の皮膚から皮下組織をくぐり、筋肉内に入り、ある程度発育します。


そして、虫齢が3~4ヶ月の幼虫になると、今度は寄生に好適な静脈内に侵入します。


脱皮を繰り返しながら、成虫になり、85~120日ぐらいかかって、最後に心臓の右心室や肺動脈に寄生します。右心室への寄生は30%、肺動脈へは70%です。


最終寄生場所に棲みついたフィラリアはさらに成長して成熟虫になり、6~8ヶ月後にミクロフィラリアという子虫を産むようになります。その寿命は5~6年とされます。


フィラリアが肺動脈にたくさん寄生すると、犬は特有のせきやしゃがれ声を出すようになり、次第に呼吸困難、貧血、腹水などの症状があらわれ、衰弱して死亡することも多いのです。


症状の現れ方は、成虫の数、感染してからの年月、寄生している部位、子虫の数、犬の体格などで異なります。


フィラリアが心臓に寄生していても、感染数が少ない場合にははじめの内はほとんど無症状です。進行すると、ひどく咳をするようになり、嘔吐や吐血が見られたり、腹水で腹部や胸部が圧迫されるために食欲がなくなり、呼吸も荒くなります。


急性のフィラリア症もあって、大静脈症候(ベナケバ・シンドローム)とも呼ばれていますが、突然、呼吸困難を起こし、茶色や濃い赤い尿(血色素尿)、黄疸などの症状が出ます。


フィラリア症はイヌ科だけの病気だとされてきましたが、イタチ科のフェレット、アザラシ、ヒトにも発見されていて、ネコにも寄生することが報告されています。


もしも、予防をしないで、1年目の夏が過ぎた場合のフィラリアの感染率は38%、年目では89%、そして、3年目では92%というデータもあります。きちんと血液検査をして、予防薬を飲ませていれば、予防できます。


2.フィラリアの予防法


月に1度服用するフィラリア予防薬は、感染から40日未満のフィラリアの感染子虫(ミクロフィラリア)を殺虫します。


抗生物質、アイバメクチン、ミルベマイシン、モキシデックといった薬で、どれも幼虫の脱皮を阻止するものです。


これらの薬は、すでにフィラリアが寄生している場合には、副作用のおそれがあります。血液中に幼虫がいると、予防薬によってそれが急速に死ぬため、循環不全を起こすことがあるからです。


ですから、フィラリア予防薬を投与する前に、血液検査(成虫抗原を検出する方法か子虫を発見する方法)をする必要があります。


予防薬は蚊の活動が始まる1ヶ月前から投与を始め、活動が終わる時期から1ヶ月後まで飲ませます。地域によって蚊の活動期間に差はありますが、おおむね4月から11月までの間に、投薬や注射を行います。


フィラリア予防薬は安全性が高いものですが、コリー、シェットランドシープドッグなどは規定量を投与しても副作用のあることが指摘されています。