●免疫と予防ワクチン接種の関係


子犬は生まれてから3~4週間は、母犬の母乳を飲んで成長します。


子犬は生まれてすぐ、母犬の乳首に吸いつきます。母犬は、分娩後2日間、初乳を分泌しますが、初乳は、通常の母乳とは見た目も組成も異なっています。初乳は黄色がかっていて、半透明で、母乳よりもはるかにタンパク含有量が高いものです。


子犬にとって、母乳を飲むこと(初乳)は、とても大切です。


高い栄養が含まれていること、子犬の最初の排便をうながす作用があること、そして、何よりも大切なのは、初乳に含まれる「免疫グロブリン」を受け取ることができるからです。


免疫グロブリンは、もともと体内にあるタンパク質で、病原性の微生物を見つけて、やっつける働きをする移行抗体です。


初乳から、子犬は感染から守るために必要な抗体の95%を受け取りますが、生後48時間を過ぎると、移行抗体は吸収される前に、胃で破壊されてしまうようになります。


母乳からの免疫が効いている間は、子犬に予防接種をしても効果がないことがあります。


母乳からの免疫の有効期限は、短い場合でも8週齢(生後56日)ぐらいまであるので、8週齢になる前の子犬に予防ワクチンを接種しても、免疫が邪魔をするからです。


8週齢を過ぎると、母乳からの免疫は自然に消滅してしまうので、免疫の空白期間ができてしまいます。その時に、子犬はパルボウィルスに感染してしまうことが多いとされています。


ジステンパーでは、生後50日前後で第1回目を接種した場合、50%の確率で免疫ができますが、パルボウィルスでは同じ時期に接種しても、免疫は25%しかできないからです。


このように、それぞれの病原体に対する免疫が完全にできるまでの時期が異なるため、ワクチンによってすべての免疫が作られる時期と回数を正確に計算すると、生後40日前後、60日前後、90日前後、100日前後の4回、パルボウィルスだけで110日~130日までに5回行うのが理想とされています。


一般的な子犬のワクチン・プログラム


第1回目 生後6~8週齢  (生後50日前後) 免疫獲得率30%程度

第2回目 生後9~11週齢 (生後70日前後) 免疫獲得率75%程度

第3回目 生後12~14週齢(生後90日前後) 免疫獲得率90%以上


ワクチンは、接種してから2~3週間で効果を発揮し、1回目で母乳からの免疫がじゃまをしなかったとして、約1年間は持続します。


免疫力が上がるまで、ワクチン接種後2~3週間は、他の犬との接触を控えるなどの注意が必要です。