●避妊・去勢手術のデメリット
1.肥満になりやすい
避妊手術をすると、肥満になりやすいと言われます。生後6ヶ月から10ヶ月齢は、成長がスローダウンする時期で、必要とされるカロリーも15~20%減少します。その時期に、避妊・去勢手術が重なる場合には、肥満にならないように食餌管理が必要です。
メスの場合には、避妊手術で子宮とともに卵巣を摘出してしまうことで、卵巣から分泌されるエストロゲンがなくなってしまうことが肥満の原因になるという説があります。
人間の場合、女性には性周期に依存した体脂肪の合成リズムが存在します。エストロゲンの分泌が低下している月経前後は食欲が高く、脂肪組織で脂肪の取り込みと蓄積に関与するリポタンパク質リパーゼ(体脂肪蓄積酵素)も増加します。この時に甘いものや脂っこいものを食べ過ぎると肥満になりやすいと考えられています。
逆に、排卵前後に分泌されるエストロゲンは、体脂肪の分解を促すホルモン感受性リパーゼ(体脂肪分解酵素)を活性化させます。この酵素はアドレナリンによってさらに活性化されるので、少し強めの有酸素運動を行えば、肥満の改善と予防につながるとされています。
2.失禁(去勢されたオス)
ベアデッド・コリーやドーベルマンによくみられます。遺伝性とも言われています。
3.性器の成長不良、性器のまわりの炎症(去勢されたオス)
4.ホルモンのバランスが崩れて、皮膚病になりやすい。
5.オスもメスも中性化するために、性格的な問題が起きやすい。
「健康な体にメスを入れるなんてかわいそう」という意見は、いささか感情的なものに聞こえるかもしれませんが、どんな臓器でもムダなものはない、自然なものは自然なままにしておくべきなのだという考え方を、「それはまちがっている」と断ずることはできません。
聖書では、人間は神様と同じ姿に作られ、地上の動物や植物を支配する立場だと教えているので、西欧人は、人間が利用する動物を飼いやすくするための避妊・去勢手術をためらわないといわれます。
しかし、アジア諸国の人たちにとっては、動物は身近な存在であり、その上に立って支配するという考え方はなじみません。
仏教の影響で、小さいころから命を尊ぶことを教えられ、動物への慈悲の気持ちが強いため、避妊・去勢手術には心理的な抵抗があるのです。
「手術はしたくない、自然のままで」と言う人には、その人なりの感じ方があるのですから、西欧流の合理主義で説得しようとしても、うまくはいかないでしょう。
しかし、「手術をしない」ということは、「放っておく」ということではありません。 「手術をしないという選択をした」ということですから、犬の健康を守るための栄養管理や、病気の早期発見・早期治療に努める、病気になったらできる限りの治療を施すという飼い主の責務を果たさなければならないのです。