●メス犬の偽妊娠とホルモンに関係する病気


メス犬は1年に2回発情します。


脳内にある脳下垂体から卵胞刺激ホルモンが分泌されて、卵巣で卵子が作るように働きかけます。


卵巣から卵子が放出されると妊娠しているかどうかに関係なく、妊娠ホルモンのプロジェステロンが分泌されます。


このホルモンの働きで、「偽妊娠」(ぎにんしん)と呼ばれる、「母乳が出る」、「食欲が増す」あるいは「軽い陣痛を経験する」などの妊娠特有の症状を見せる犬もいます。


何回も妊娠したメス犬に比べると、妊娠を経験していないメス犬は、子宮蓄膿症、乳腺炎、乳ガンなどにかかる可能性が高くなるのは、このホルモンの影響だと考えられています。


卵巣に黄体ができると子宮は細菌感染しやすくなります。発情によって子宮が開いて細菌が侵入するためです。軽い場合は子宮内膜症ですが、症状が進んでうみがたまるようになると子宮蓄膿症です。


どちらも炎症を伴うので、水をたくさん飲んでおしっこをたくさん出す多飲多尿の症状をみせます。


人の場合、排卵後に妊娠しなければ生理(月経)が起こり、妊娠準備のために形成された子宮内膜と血液が排泄され、ホルモンバランスも正常に戻ります。


しかし、犬の場合には、生理は排卵前のもので、発情期に妊娠しなかったとしても、人の生理のように明確な切り替えはありません。妊娠した時と同じように、エストロジェン(卵胞ホルモン)、プロジェステロン(黄体ホルモン)、プロラクチン(乳腺刺激ホルモン)が分泌されるのです。


その時に、そういったホルモンの分泌量が低下しないと、妊娠した時と同じような体の変化、行動の変化が起こります。それが偽妊娠です。


メス犬の繁殖本能から生じる偽妊娠を抑制できるという識者もいます。


群れ社会では、群れのリーダーの優秀な遺伝子を残すために、繁殖が許されるのは上位のメス犬だけです。


人間と暮らしていても、飼い主がリーダーシップをきちんととっていれば、メス犬の繁殖本能を抑制することができるという考え方です。