●望まれない繁殖を避けるための避妊・去勢手術


昔は野良猫、今は地域猫と呼ばれ方が変わった飼い主のいない猫たちの場合には、避妊・去勢手術をしておかないと、自然の摂理でどんどん繁殖してしまいます。


そして、産まれてきた子猫たちの多くは殺処分される運命です。


「サザエさんの家のタマ」のように、家で飼われている猫も勝手気ままに外を出歩いていることが多いので、避妊・去勢手術は必要と言わざるを得ません。


最近は街中では全く見られなくなった野良犬ですが、野良犬(野犬)も放置しておくと、どんどん繁殖して増えてしまい、人を襲ったり、狂犬病の危険性が高くなることなどが懸念されます。


野犬を捕獲した場合、避妊・去勢手術を施した後で、また山野に戻すということはあり得ないわけで、犬たちは殺処分されます。


何らかの理由で捨てられた犬たちを保護して、新しい飼い主を捜すボランティア団体では、譲渡する前に犬に避妊・去勢手術を施しています。


望まれずに産まれてきて殺処分される動物をこれ以上増やさないため、そして、飼えるのであれば、すでに産まれてきてしまった動物の命を1頭でも多く救ってあげて欲しいと考えているからです。


しかし、室内犬としてきちんと飼われている家庭犬の場合には、乱繁殖してしまうことはありませんから、「望まれない繁殖を抑止するために避妊・去勢手術をすべきだ」という考え方は当てはまりません。


一般の飼い主のなかには、「一度ぐらいは子犬を産ませたい」と考える人もいます。


それに対して、「素人が子犬の繁殖をすることは好ましくない、なぜなら遺伝的な疾患をコントロールするための専門的な知識や経験を持っていないので、ハンディキャップを持つ子犬が産まれるかもしれないから」と諌める声が聞かれ、「繁殖はプロにまかせるべきだ」と説得されます。


「女に産まれたのだから、母になる喜びを与えたい」と考えるのは、ごく自然な感情です。


しかし、妊娠そのものに医学的リスクがあることも忘れてはいけません。また、産まれてくる子犬の行き先を考えずに、無計画な繁殖をすることもいけません。


遺伝的疾患を持っていないかどうかを判断することはむずかしいことかもしれませんが、その犬種に特有の疾患について調べておき、獣医師のチェックを受けておくことが勧められます。


また、メス犬が肉体的に成熟していることはもちろん、子育てができる精神的な能力があることも大切です。