●おしりの清潔と肛門の病気


犬がおしりを床にこすりつけながら引きずるしぐさをスクーティングと呼びます。


おしりスリスリやしっぽを追うようなしぐさを繰り返す場合、におい袋の肛門嚢が炎症をおこしていたり、寄生虫やアトピー性皮膚炎、あるいは腫瘍などが疑われます。


(1)おしりのケア


軟便や下痢の場合、肛門の周りに便が残っていると、それにゴミや泥が付着して汚れがひどくなってしまいます。排便後に寄生虫卵が付着することもあるので、肛門の周りは清潔にしてあげて下さい。


(1)長毛犬種では、尾の下側や肛門の周りの毛を短くカットして、汚れにくくします。


(2)肛門の周りが汚れていたら、洗い流してきれいにし、乾かします。


(3)シャンプーの時に肛門嚢にたまった分泌物を絞り出します。(肛門腺絞り)


(2)小型犬に多い「肛門嚢炎」


肛門嚢は、自分のにおいで縄張りを主張するための分泌液を貯めておく「におい袋」です。

肛門嚢に貯まっている分泌液を外に出す「導管」は、肛門の開閉をする括約筋の間にあって肛門の周りが汚れた状態だとその導管にうんち片が詰まります。


小型犬は導管も細いので、導管が詰まりやすく、肛門嚢に貯まった分泌液が排出されずに貯まってしまい、さらにうんち片から細菌感染することがあります。そして炎症を起こして、おしりが不快になるので、おしりを床にこすりつけたり、肛門をなめたりする動作が見られるようになります。

肛門嚢炎の治療


初期の段階なら、肛門嚢を絞って貯まっている分泌物を出すだけで、症状が改善されることもあります。


しかし、ひどく腫れて化膿しているような場合には、手術が必要になります。患部を切開して、中に貯まっている膿を出し、洗浄・消毒し、縫合します。


再発する場合は肛門嚢を切除してしまうこともあります。肛門嚢は切除しても問題はありません。


(3)その他のおしりの病気


肛門周囲腺腫


オス犬に多い病気です。肛門の周囲にある分泌腺は、睾丸から出る男性ホルモンの影響を受けていて、男性ホルモンの分泌が多くなると、分泌腺の活動が活発になって、腫れてきます。そのために炎症を起こして、破裂しやすくなります。


精巣の除去手術(去勢手術)で予防できます。


肛門周囲瘻管


大型でしっぽが垂れている犬種に多い病気です。肛門の周りの汗腺や毛穴が細菌感染を起こしてしまうものです。


再発を防ぐために、尾を切って肛門周囲の風通しを良くする手術が必要な場合もあります。


会陰(えいん)ヘルニア


肛門周り=会陰部の筋肉が緩んできたためにできた穴(ヘルニア孔)から、腸や膀胱が脱出するようになり、便が直腸の曲がったところ(ヘルニア)に貯まってしまうため、スムーズな排便ができなくなります。


去勢していないオスの高齢犬に多い病気です。ヘルニアに膀胱が入り込んだ場合、尿が出なくなって、死に至るようなこともあります。


肛門の周りやしっぽの付け根がアトピー性皮膚炎になっていることもよくあります。抗アレルギーの薬用シャンプーで洗い、患部を清潔に保つようにします。