●サプリメントとは?
飼い主さんが、ペットに最も求めていることは、「いつまでも健康でいて欲しい」ということでしょう。「ペットの体によいもの」を探している飼い主さんが選ぶもののひとつが、「サプリメント」です。
サプリメントの語源は、「補充するもの」。米国の食医薬品局では、サプリメントは「生活で不足しがちなビタミン、ミネラル、ハーブ、アミノ酸などの栄養素を、1種類以上含む栄養補給のための製品」と定めています。
サプリメントは、もともとはDaily Supplement、つまり「食事を補うためのもの」ですから、「栄養補助食品」なのです。まず「食事」があって、それを補うものがサプリメントですから、サプリメントだけを摂っていれば、健康が維持できるというものではありません。
サプリメントには、医薬品メーカーや食品メーカーが動物病院での専売品として開発したものから、人間用サプリメントを作っているメーカーがそのままペット用に転用したものまで、多種多様な商品があります。
治療の補助として、動物病院で使用されるサプリメントは、獣医師による臨床試験に基づいて用法用量の目安がありますが、市販のものは栄養補助食品としての位置づけなので、きちんとした法規制はなされていません。
含まれる成分によっては、サプリメントは、人間には害がなくても、犬や猫にとっては害がある場合もあります。人間とは代謝システムが違うので、ペットにはうまく消化・吸収できない成分があるからです。
また、「なんとなく体に良い」というイメージが定着しているサプリメントですが、誤った使い方をすると健康被害に通じることもあります。
サプリメントによる健康被害の原因には、次のふたつが考えられています。
1.製造メーカー・小売業者がサプリメントの危険性を軽視している
2.消費者のサプリメントへの期待が過大
ペット用サプリメントの場合、詳細な使用原材料の表示がなかったり、成分表示も明確ではないケースがあります。
商品に貼られているラベルからは十分な情報を得られないので、誤った使用によるペットの健康被害が起こる可能性も指摘されています。
飼い主さんが忘れてはならないのは、サプリメントはあくまでも「補助食品」であるということです。
1. 主食(ドッグフード)との関係
良質なペットフードには、十分なビタミンやミネラルが添加されている。むやみにサプリメントを与えるとそれらの栄養素を過剰に摂取してしまう可能性がある
2. 投薬との関係
ハーブやサプリメントには、薬の働きを強化したり、逆に弱めてしまうものがある
サプリメントは、健康補助食品や栄養補助食品ですから、治療薬のように、病気を治すものではありませんが、治療と併用して、術後や病後の回復をサポートしたり、栄養バランスを整えて病気になりにくい体づくりに役立つものです。
しかし、何らかの症状を改善しようと考えて、一度にサプリメントを多量に与えると、逆に体に害になる場合もあります。
例えば、カルシウムは、骨や歯の形成だけでなく、筋肉の収縮や神経の働きを助ける大切な成分なので、カルシウムが不足すると、心臓を含め、身体各部にいろいろな問題が生じます。
しかし、育ちざかりだから骨を丈夫にしようと考えて、カルシウムを大量に与えとしても、ビタミンDやマグネシウムと一緒でないと上手に吸収されないため、骨の形成にはあまり役立たず、かえってカルシウム分が血管などに沈着して血管が硬くなったり、体内でカルシウムを有効利用する機能が衰えたりしかねません。
近年、ペットにも増えているアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患では、皮膚のかさかさ、乾燥肌を抑えるのに役立つと言われる亜鉛をサプリメントとして与えることで、かゆみを抑える効果が期待されます。
しかし、亜鉛を摂り過ぎると、頭痛、吐き気、貧血、免疫力低下の症状が出る可能性があります。
水溶性のビタミンCは、余分に摂取したものは、体の代謝作用で体外に排せつされ、体に蓄積されることはありませんが、大量に摂取すると、下痢や嘔吐、頻尿の要因になることもあります。
脂溶性のビタミンEは、体の必要量以上を摂取すると、体内脂肪の中に残留してしまいます。
ビタミン類やミネラル類は、総合栄養食のペットフードにも含まれているので、「フードで不足する量をサプリメントで補う」ということを理解していないと、過剰摂取になる可能性が高いのです。