●ペットロスとは
日常生活に支障をきたすほどの深い悲しみに長期的に沈んでしまうという事例はそう多くはありません。そのようになる人にはその人自身の背景に何か大きな問題があって、それが表に出ないように歯止めの役割を果たしていたペットが死んだために、内在していた問題がペットロスという形で顕在化してしまったと考えられます。
アメリカの調査では、ペットロスの体験者が立ち直りに要する期間は平均で約10ヶ月となっています。日本でもほとんどの人は自力で立ち直ることができ、立ち直れずに病的な症状にまで至る人はほんの数パーセントに過ぎないと考えられます。
ペットロスを深刻にしてしまうのは次のようなことです。
1) ペットを死なせてしまったといつまでも自分を責める
2) 悲しみをいつまでも引きずっている自分は異常ではないかと考えてしまう
3)「たかがペットが死んだくらいで何を落ち込んでいるんだ」と言う周りの反応
4)「ペットの寿命は人より短い。悲しい思いをしたくないので私はペットを飼わない」と飼い主の悲しみを理解しているように振る舞いながら、悲しんでいる飼い主とペットとのそれまでの楽しい生活までも全て否定してしまうような他人の発言
5)ペットの死の悲しみがまだ癒えていない人へ「また、別のペットを飼えば」という発言
悲嘆、喪失体験、死別の悲しみについては、その対象が人でも動物でも同じです。気をつけなければならないのは、ペットロスを深刻にさせてしまうような「妨げ」があることで、獣医師との不調和、冷たい周囲の反応、心ない友人の一言などがあげられます。
「たかが犬一匹のことで・・・」といった言葉で、誰も自分の気持ちをわかってはくれないと感じた飼い主が抑うつ状態になって、立ち直りにも時間がかかってしまうことがあるのです。
誰もがペットを失った悲しみはごく普通の感情であることを知り、中には悲しみが心への大きな衝撃となってなかなかもとの精神状態に戻れない人もいて、そのような人には何らかの適切なサポート体制が必要であることを理解してもらいたいのです。