●飼い主のしつけの心得
経験の浅いお母さんが自分の子供とよその子供を比較して、「うちの子は発育が遅れているのではないか」と思いつめてしまうことがあります。
犬の場合にも、それぞれ個性や発育の差がありますから、うまくしつけられないとあせったり、あるいは、あきらめたりしてはいけません。
犬を飼い始めた人が、「犬のしつけが、子どものしつけとこんなに似ているとは思わなかった。子育てをする前にペットを飼っておけばよかった」と感想を述べることがあります。
しかし、子育ては、将来、子どもを自立させるためのものですが、犬を飼うことは、その一生涯に責任をもつということです。
災害などの不測の事態や飼い主の病気などで、犬を手放すことになるかもしれません。そんなときに、飼い主にしかなつかない、他の人が触ろうとすると咬みつくといったような社会性のない犬では、里親として引き取ってくれる人もなかなか見つからず、犬も幸せになれません。
(1)犬が「しても良いこと」と「しては悪いこと」
犬には人のパートナーとして、許されること、許されないことの境界線がはっきりあります。その境界線の引き方は、そんなにむずかしいことではなく、犬の健康や生きていく上で障害になるようなことをさせないということです。
人間とともに生きるためのルールを犬に教えるのは、飼い主です。「人に危害を加えない」「犬自身の命を守る」ことを基本にして、しつけをして下さい。
(2)犬とのコミュニケーションは、「はっきり」と「一貫性」が大切です。
犬どうしには、耳やくちびるのわずかな動きによってわかる、視覚的なシグナルがあります。
人がそれと同じシグナルを送ることはできませんが、一貫性を持って接していけば、犬は人の動作を読み取ることができるようになると言われています。
見るサイン(視符=動作)と聞くサイン(声符=言葉)の両方を犬に同時に印象づけるのはそのためです。「待て」と命令しながら、手の平を犬に見せるといったことです。
飼い主の気分が良い時にはかわいがり、きげんが悪い時には叱るといった気分次第で変わる接し方では、犬は混乱してしまいます。家族全員で一貫した接し方をして下さい。
(3)犬に「がまんすること」を教える
犬はやりたいことを止められると、あらがったり、吠えたりして抵抗します。それを許してしまうと、「こうすれば、飼い主はあきらめてくれるんだ」と学習してしまいます。人間との生活の中で、やってはいけないことをがまんできるようにするのが、しつけです。
(4)トレーニングの心得
1回のトレーニング時間が長すぎると、犬は集中力を持続できません。1回5分ぐらいで、それを時間をおいてやる方が効果的です。
いろいろなことをやらせたいと欲張らないで、ひとつのことが完璧にできてから、次のことに挑戦させるようにしましょう。