●日本における学校での動物飼育について
そして、全国の9割の小学校で動物舎での動物飼育が行われています。
「学校での動物飼育の分類と基本飼育」
学校での飼育には次の4つの目的が定められています。
①愛情を伴うペット飼育(基本飼育)
②理科の観察飼育(理科飼育)-教育課程に沿って行われる
③生活への関わりを理解する家畜飼育
④その他、展示飼育-きれいな、あるいは珍しい動物
③と④については畜産農家や動物園などへの社会科見学を行い、学校では負担の少ない①と②を実践します。
また、食肉として肥育される経済動物としての家畜については、食教育を含めて、中学、高校で行うことが理解力の点からも望ましいと考えられます。
小学校では、子供に動物に対する愛情と共感を養い、生命科学的な刺激を与える飼育が求められます。家庭で飼われるペットが家族の一員となり、愛される存在になるように、学校で飼育される動物に対して児童が同じ気持ちを抱くようになることが大切です。
① かわいがってこそ、子どもの心に命の大切さ、愛情、他への共感を伝える
② かわいがっている子どもにとって、動物は我が子と同じような存在である
③ 動物を大事にするということは、子どもの心を大事にすることである
④ 生まれて死ぬに任せている飼育は、子ども達を死に鈍感にさせてしまう
⑤ 弱い存在の動物が困っているときに、大人が助け示さないことは、子どもに無力感をもたせる
⑥ 弱い動物を心配する子どもの心を大事にすることで、愛情と責任を教えることができる
⑦ 子どもの大事にしている動物を大切に扱うことで教師は敬愛される
動物を大事に世話している子どもたちは、「飼育をしていて一番うれしいことは、動物が良いウンチをした時」と言っているように、我が子が健康であることがうれしいという「親」の心情になっています。
人格形成のために大切な児童期に、命の大切さ、相手への思いやり、優しさなどの体験を通して、人間としての土台を作るため、小動物との心の通う交流を通じて、子どもたちが愛しい弱いものをかばう気持ちを育てることは、とても大切なことです。
しゃべらない動物を世話する時、その気持ちを読み取ろうとすることは、相手の気持ちを洞察する能力や共感する心を養います。
また、ウンチやおしっこを片付けたり、飼育舎をそうじしたりするといった汚くて嫌なことやめんどうなことをがんばってすることで、将来の子育ての疑似体験をしたり、責任感や勤勉性を養うことにつながります。
動物はそれぞれ、その種類に特有の生育環境が必要です。それを整えることが「動物を世話する」こと、「手間をかける」ことになります。
「動物はどうしてもらいたいのか」「動物の気持ち」を知ろうとするかどうかが、「命を大切にする」ことへの第一歩です。動物のちょっとした反応を感じ取って、それを何度も経験していくうちに、「かけがえのないもの」「何ものにもかえがたい存在」という感情が芽生えてきて、動物をほんとうに「かわいい」と思うようになります。
これまで学校で行われてきたのは、学校での飼育動物の世話や動物園への遠足、農場訪問などの社会化見学などでしたが、それらは「他の種を支配するのではなく、生きるもの全てを大切にいつくしみ、守っていく」という感性教育(ヒューメイン・エデュケーション)の一環でした。
人と動物のふれあい活動などのレクリエーションとしての動物介在活動(AAA)がありますが、その舞台が学校になり、対象が子どもになったものを動物介在教育(AAE)と呼んでいます。
AAEは、それまでの感性教育のひとつとしての動物愛護教育とは異なり、例えば、教室で犬と一緒に授業を受けることで、子どもたちの集中力が高まるといった効果を念頭に置いています。
介在する動物として、犬が最も適切だと考えられているのは、犬の特性として、意思疎通ができること、従順で訓練や管理がしやすいといった理由の他に、ボランティアの犬とハンドラーを集めやすいということも大きな要素なのです。
一般市民である犬の飼い主が、AAEを通じて小学生の授業に参加することで、地域が活性化し、地域で子どもたちを見守り、育てていくという仕組みが育つことも期待されています。
「NPO法人日本ブリーダー協会の犬権宣言より」
人間が動物を尊敬することは、人間自身のなかの人間の尊重につながります。教育によって、幼いうちから動物を観察し、理解し、尊敬し、そして愛することを教えるべきです。