犬を介在させる学校での情操教育
●英国における動物ふれあい教育
しかし、英国では夜間・週末・休日・休暇などで人がいないことが多い学校での動物の飼育は、好ましくないと考えられています。
それは、1960年代後半に英国で提唱された動物愛護の基本的な考え方である「5つの自由」から来ています。
5つの自由
① 飢えと渇きからの自由
その動物種・年齢・状態に適した食物と水を与えること
② 不快からの自由
その動物にとっての快適な環境を与えること
③ 痛み、負傷、疾病からの自由
動物が病気やけがに陥ることのないように健康管理をすること。病気やけがをしたときには、その時点における最良の獣医療を与えること
④ 恐怖や抑圧からの自由
動物に恐怖や多大なストレスを与えないようにすること
⑤ 本来の習性を発揮する自由
動物にとっての本来の習性・自然な行動が発揮できるように環境を整えること
英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)の動物ふれあい教育の目標として掲げられているのは、「人・動物・環境に対する共感と尊重を育み、全ての生物は相互依存していることを理解する。」というものです。
基本的には、RSPCAは動物ふれあい教育を環境教育と捉えて、子どもたちへの早期教育を通して、生態系の中での自分たちの存在を認識し、環境意識が高まり、生命の価値を学び、道徳教育が促進され、子どもたちが生きる力を身につけられると提唱しています。
RSPCAは「アニマル・フレンドリー・スクール」を認証していますが、その取得には次のような条件が課せられています。
1. 動物ふれあい教育が授業に取り入れられているか
2. 学校の建物や校庭が動物にやさしくなっているか
3. 課外活動においても動物について学べるようになっているか
4. 校外学習で動物に関係のある現場に行くときにはどんなガイドラインがあるか
5. 学校はゴミをどのように扱っているか
動物についての教育、学校の環境管理、全ての生物に対する尊重と責任、動物と環境を取り巻く問題などについて考えられ、配慮されていなければ認証が得られないようになっているのです。
RSPCAでは、動物と接する場合の簡単な「動物ルール」を提唱しています。
* 全ての動物を尊重する
* 動物のニーズを理解する
* 動物に近づく時は静かに
* 野生動物には触らない
* 野生動物を持ち帰らない
* 石や枝を動かしたら元に戻す
* 動物と遊んだ後は手を洗う