●犬の騒音・異臭などで近隣住民に迷惑をかけたトラブルの裁判例


ペット飼育者の注意義務違反


ペットの飼い主に対しては、民法718条で「動物の占有者はその動物が他人に加えたる損害を賠償する責任がある」と定められています。ペットが、騒音や異臭などで、近隣住民に迷惑を及ぼしたり、散歩中に他人に損害を与えた場合には、飼い主は損害賠償を請求されます。


通常の「不法行為責任」では、被害者がどのような損害を被ったかを立証しなければならないのですが、ペットの場合には、「動物の種類及び性質に従って、相当、注意をして飼っていた」という「注意義務」を尽くしていたことが証明されない限り、免責にはならないとされているため、より重い責任を負うことになります。


●事例(1)東京地方裁判所 平成7年2月1日判決


事案


近隣の飼い犬の激しい鳴き声で、アパートの住民が引っ越してしまったために、その建物の所有者が「アパートの家賃収入が減った」ことに対する損害賠償を求めた。その他の近隣住民からも犬の鳴き声により精神的な苦痛を受けたとして、損害賠償請求された。


判決


1. 犬は、毎日、一定の時間、断続的に鳴き続け、夜間や早朝にかかることが多かった。


2. 住宅地で犬を飼育する以上、飼い主は、犬の鳴き方が異常なものになって近隣の者に迷惑を及ぼさないよう、常に愛情を持って犬に接し、規則正しく食事を与え、散歩に連れ出して運動不足にしない、日常生活でのしつけをして、場合によっては訓練士をつけるなどの飼育上の注意義務を負う。


3. 被告である飼い主には、注意義務違反が認められる。


4. アパートの賃貸契約の解除と犬の異常な鳴き方には因果関係があり、賃料の損害賠償を認める。


5. 近隣の住民に対する慰謝料についても、ひとり当り30万円と認定した。
被告である飼い主が犬舎に防音設備を施していること、犬の鳴き声が原因というよりは、近所づきあいがないという人間関係の問題が根本にあること、犬が鳴いている時間帯、長さなどが考慮された。