●事例(2)東京地方裁判所 平成8年7月5日判決


被告である犬の飼い主の主張


1. ペットを飼育する権利は、憲法13条及び29条によって保障されている重要な権利である。その権利を制限する場合、予想されるペット飼育による被害の大きさとつりあいがとれるような範囲にとどめるべきである。


2. 飼育しているのは、小型のシーズーで、他の住民に何らの被害も与えていない。それなのに管理組合が飼育の差し止めを要求するのは、「権利の濫用」である。


「判決」


1. ペットの飼育は、あくまでも他人に迷惑をかけない範囲内ならば、自由にできるといったものに過ぎない。


2. マンションでの動物の飼育は、糞尿によるマンションの汚損や臭気、病気の伝染や衛生上の問題、鳴き声による騒音、咬傷事故など、建物の維持管理や他の居住者の生活に目に見える影響をもたらす危険がある。


3. マンションでの動物の飼育は、動物の行動、生体自体が他の居住者に不快感を生じさせるなどの目に見えない影響を及ぼすおそれのある行為である。


4. 具体的な実害が発生した場合に限って規制するというのでは、他の居住者の不快感といった問題に十分に対処することができず、また、実害が発生した場合にはそれが繰り返されることを防止することも簡単ではない。


5. 規約の適用について、明確さと公平性を維持するためには、具体的な実害が発生していなくても、動物の飼育を一律に禁じることは合理的である。規律を保つために必要なことであり、権利濫用ではない。


「総括」


これまでの判例では、裁判所は、一律にペット飼育を禁止する規約の有効性を広く認めています。


入居後に、規約を「ペット飼育禁止」に改正する場合も、盲導犬や自閉症の治療に必要といった生活上で必要不可欠なものでなければ、ペット飼育者の同意がなくても、改正を有効とし、ペット飼育差し止めを認めています。