ペットトラブルの裁判例


●分譲マンションでのペットの飼い主と住人とのトラブル


マンションには、動物が共同生活環境にいることを嫌がる住人とペットの飼い主との間に利害対立が発生しやすいと考えられています。


分譲マンションの場合は、住民は管理組合員であり、飼い主である住民と他の住民とのトラブルでは、管理組合の内部での対立という構図になります。そうなると、「ペット飼育を禁止する管理規約」を前提として、管理組合がペットの飼い主に対して「ペットの飼育を止めるように求める」裁判を起こすことになるのです。


事例(1) 横浜地方裁判所 平成3年12月12日判決


「被告である犬の飼い主の主張」


1. 入居時点では、ペット飼育を禁止する規約はなかった。


2. 犬を家族の一員としてかわいがっている。


3. 自閉症の子どもにとって、犬は重要な役割を果たしている。


4. 動物の飼育を禁止する規約の変更は、飼い主である住人の権利に「特別の影響を及ぼす」もので、規約の改正は、区分所有者である飼い主の承諾を得ていないので無効。


判決(控訴審を含む)


1. 旧規約には、動物の飼育を禁止する条項はなかったが、入居案内には「動物の飼育はトラブルの最大の原因なので一応禁止する」旨の記載があった。


2. 動物の飼育を認める規約のあるマンションは、トラブルを防止するために、飼育方法や飼育を許される動物の定義について細かい規定を設けている。そして、他の居住者に迷惑がかからないようにするため、防音設備を設けたり、集中エアコンなどの防臭設備を整えるなど、相当、整備をしている。


3. マンション内での動物の飼育は、一般に他の住民に有形無形の影響を及ぼすおそれのある行為であり、それを一律に共同の利益に反する行為として管理規約で禁止するのは、区分所有法として許される。


4. ペット等の動物の飼育は、飼い主の生活を豊かにする意味はあるとしても、飼い主の生活・生存に不可欠なものというわけではない。


5. 飼い主の子どもが自閉症であるといった診断結果はなく、「犬が生活・生存にとって客観的に必要不可欠な存在であるという特段の事情」は存在しない。