動物の愛護及び管理に関する法律(動愛法)
●ドッグレース犬
米国で、グレイハウンドを使った商業的なドッグレースが始まったのは1900年代初頭、電動で走る模造ウサギが発明されてからのことです。機械のウサギと楕円形のトラックが採用され、競馬場に似た競技場が作られました。グレイハウンド・レースは人気を博し、ギャンブラーたちの心をつかんでいったのです。
犬を使うドッグレースは、主催者にとっては、競走馬を使うよりもメリットが多いのです。
まず、犬であれば75×90×105センチの小さなケージで飼うことができ、しかもそのケージを積み上げておけます。また、食肉処理場から出る高タンパクの廃棄物を利用することで、餌代を低く抑えることができます。
そして、もっとも大きなメリットは、犬は簡単に大量生産がきくことです。一匹のグレイハウンドの雌が、毎年6匹から8匹ずつ、何年間かにわたって子犬を産むことができるからです。この業界の犬繁殖工場では、レース用の商品を安価で大量生産できるというわけです。
ファラオや王族の供であったグレイハウンドは、国際的ドッグレース・マシーンの歯車になってしまったのです。
しかし、原子力発電施設と同じように、グレイハウンド・レース業界も、つねに廃棄物の処理という問題を抱えてきました。
レースは若い犬の競技だからです。収益性から考えると、グレイハウンドのレース適齢期は生後18ヶ月から5歳までの間です。レースを引退した犬達のほとんどは、安楽死させられるのです。
帳簿の「資産」の欄から「負債」の欄に移されれた段階で、すぐに薬品か電気を使って殺されるか、あるいは撃ち殺されてしまう運命です。
●レース犬「ハッピー・ラルフ」
トレーナーが餌入れに何も入れずに通り過ぎてしまうのを、ハッピー・ラルフは注意深く見る。これが最初のサインだ。
午前中のうちに、駐車場を抜けて競技場のパドックへ向かうことになるはずだ。彼は落ち着かない様子で起き上がり、伸びをして、立ち、ドアをじっと見つめる。
ハッピー・ラルフにとって、レースの日の興奮は走ることのみにあるわけではない。それはこの狭苦しい寝所からほんの数分間、外へ出ていられる唯一のチャンスでもあるのだ。
週2回のレースのとき以外、彼はその生活のすべて、1日24時間を、この鍵のかかった90立方センチに満たない空間に閉じ込められて過ごすのだ。
4年のレース生活で賞金10万ドル以上を稼ぎ出してきたハッピー・ラルフにも、引退のときが近づいている。レーストラックの厳しい掟では、採算のとれない5歳のグレイハウンドに残された道は安楽死だ。しかし、稀にほんのひと握りは里親に引き取られることがある。