人間と犬の関係


「犬の先祖は群れで狩りをするオオカミだから、飼い主の家族を群れとしてとらえている」という考え方が一般的なものです。


犬を甘やかすと、自分がその群れの中で一番エライと勘違いするアルファ・シンドローム(権勢症候群)になって、わがままで手に負えない犬になってしまうと指摘されてきました。


オオカミの群れを階層社会として捉える考え方を、ヒエラルキー理論と呼びます。


オオカミの群れでは、アルファと呼ばれるボスがいて、群れはピラミッド社会になっています。狩りをする、獲物を分ける、群れの中の争いを防ぐ、強い子孫を残すといった目的のために、自然に作られた階層制度なのです。


しかし、最近では、人間に飼われている犬たちには、上下関係は存在しても、ヒエラルキーのような階層社会は存在しないのではないかという新しい説が唱えられるようになっています。


犬は飼い主である人間を群れのボスといった存在ではなく、母犬のように考えているのではないかと言うのです。自分に食餌を与えてくれて、守ってくれる母親という感覚です。


犬の生態や行動には、オオカミと共通する部分も多いのですが、人が犬をさまざまな用途に利用するために、選択的な育種を繰り返してきた結果、形態だけではなく、行動にも、犬種によって違いが出るようになりました。さらに、犬種による差以上に、一頭一頭ごとの違い(個体差)も大きいのです。


そのような捉え方をベースにして、犬の行動や性格を理解しようとする場合には、次のようなことに留意しなければならないと言っています。


1. 基本的には、オオカミに似た部分が多いが、全てをオオカミに基づいて考えてはいけない。

2. 犬種が異なれば、行動や性格には違いがある。

3. 同じ犬種でも、全ての犬に当てはまるとは限らない。個体差が大きい。


犬が飼い主を信頼するようになるためには、次の4つの要素が大切なのだという意見があります。表現はシンプルですが、なるほどと思えるものではないでしょうか。


1. 飼い主といれば、食いっぱぐれがない。

2. 飼い主といれば、安心、安全。

3. 飼い主といれば、楽しい。

4. 生活全般で、飼い主が主導権を握っている。