犬にはどんな病気が多いのか


(アニコムデータラボ 2004年4月1日~2005年3月31日)


皮膚科 25.4% 耳鼻咽喉科 16.7% 消化器科 16.2% 

整形外科 7.2% 眼科 6.6%  泌尿器科 4.6% 

その他23.3%

   
●皮膚病


「皮膚は臓器の鏡」と言われています。体内に異変があるとそれが皮膚の症状として現れることが多いからです。


皮膚病には、治りにくい難治性のものが少なくなく、獣医師と飼い主さんが二人三脚で根気強く、治療を続けなければならない疾患です。


皮膚病の原因として最も多いのがアレルギーで、代表的なものは、ノミアレルギーとアトピー(吸引アレルギー)、続いて食餌アレルギーです。


皮膚病の50%にはかゆみが伴いますが、皮膚が乾燥しているとかゆみが悪化するので、皮膚に潤いを補充するケアが必要です。


皮膚病の症状には、脱毛もあります。脱毛には、犬が咬んだり、舐めたり、こすったりしたことで起こる外傷性脱毛と、自然に毛が抜けてしまう非外傷性脱毛の2種類があります。


また、毛の成長周期が関係する全身性脱毛と身体の一部の病変による部分脱毛があります。


更に、脱毛が身体の片側(非対称性)に起こる場合と、身体の両側(対称性)に起こる場合があります。身体の両側が対象に脱毛する場合には、内分泌系の病気、つまりホルモンのバランスが崩れていると考えられます。そのような内因性の皮膚病でも、犬がかゆがって皮膚をかき、二次的に細菌感染を起こして、患部が化膿することもあります。


1.ノミアレルギー


アレルギー性皮膚炎の中で、最も多いのがノミアレルギーです。犬の皮膚疾患の50%を占めると言われます。


犬がノミに咬まれて、ノミの唾液中に含まれる物質に対してアレルギー反応を起こした結果、皮膚病を発症します。3~5歳の頃に初めて症状がでるケースが多いと言われます。


症状は、激しいかゆみとともに、尾の付け根や股関節の皮膚が赤くなり、毛が抜けてしまいます。

現在では、ノミの駆除が進んだために、減少傾向にあります。


2.アトピー (吸引アレルギー)


花粉、カビ、ハウスダスト(ちり、ほこり)、ダニの死骸やフンなどを吸い込んで、それに対する抗体が作られて、過敏症を引き起こすものです。


アトピー性皮膚炎の場合には、原因が体のなかにあるので、体の表面に変化がなくても、かゆみの症状が表れます。多くの犬が夜になるとかゆがるというのが特徴です。


前足や後ろ足の指の間、眼の周辺、耳、内股、脇、会陰部、肛門周囲などにかゆみや赤みで出て、悪化すると全身に及びます。アトピーの特徴として、人間のように鼻炎を起こすことはまれで、犬の場合には、50~80%の犬が両耳に外耳炎を発症します。


アトピーの好発犬種(2004年JKC登録犬数に基づくアレルギー陽性犬数)


ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア、柴犬、シー・ズー、ワイアー・フォックス・テリア、ダルメシアン、ゴールデン・レトリーバー、フレンチ・ブルドッグ、シェットランド・シープドッグ、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、パグ


その他にも、ボストン・テリア、ボクサー、M.シュナウザーなどがあげられています。


治療では、ステロイド剤、抗ヒスタミン剤、脂肪酸、ホルモン剤などを組み合わせて、投与します。


ステロイド剤は、かゆみを止める対症療法として使われる薬剤ですが、副作用もあるので、長期的に使用することは好ましくありません。


ステロイド剤に頼らない治療法として勧められているのが、シャンプー療法、温浴療法、食餌療法、サプリメントなどです。


3.食餌アレルギー


犬の食べているものがアレルゲンとなって症状を引き起こす病気です。


アレルゲンのほとんどはタンパク質で、牛肉、牛乳、大豆、小麦、卵、馬肉、鶏肉、とうもろこし、豚肉などです。


症状は、かゆみ、そして皮膚の病変で、顔、指先、足の裏、肛門周囲に起こりやすく、全身に広がることもあります。


●膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)


小型犬に多い代表的な病気です。ポメラニアン、マルチーズ、ヨーキー、シーズー、チンなどすべての小型犬に多発します。


後ろ脚の膝蓋骨(ひざのお皿)が内側にずれる内方脱臼と、外側にずれる外方脱臼があります。重症になると跛行(はこう)するようになります。(足をひきずって歩く)


後ろ脚の立ち方がおかしい場合には、膝蓋骨脱臼の可能性があります。


犬を仰向けにして、後ろ脚を持って屈伸運動をさせるという簡単な矯正法がありますが、生後1ヶ月頃から始めると効果があると言われます。1日に2~3度、1度で20~30回の屈伸運動をやってみて下さい。


膝蓋骨脱臼は、メス犬に多く発症する遺伝的な病気と言われ、発症したメス犬は繁殖には使わないようにして下さい。


●気管虚脱


小型犬に多い、呼吸器の病気です。


気管の一部が細くなってしまう病気で、8歳ぐらいから発症します。


好発犬種は、ポメラニアン、マルチーズ、ヨーキーなどで、よく咳をするようになることから分かります。


気管の狭窄(きょうさく)とは異なり、気管虚脱では、気管の一部の軟骨が変形していて、気管の上下がくっついてしまう(扁平化)ものです。そのため、よく咳をするようになるのですが、その咳は乾いた咳と呼ばれます。ちょうど喉の奥に何かがひっかかっていて、それを吐き出そうとするように、ゴホッ、ゴホッという苦しそうな咳です。


レントゲン検査で確認した上で、抗生物質や気管支拡張剤で治療しますが、治療効果はあまりありません。最近では、手術を施すことも多くなっています。


●消化器系の病気


胃の後ろ側の幽門の病気が多いとされています。


短頭種の犬はよく吐くことがあると言われますが、この幽門が肥大したり、狭窄(きょうさく)したりして、機能がマヒしている場合が考えられます。幽門部がマヒしているのでそこに食物がはいっても、長く留まることになって、それを吐き出そうとして嘔吐が起こるのです。