トイレのしつけ実践編


犬には、ねぐらからできるだけ遠い場所で排泄しようとする性質があるので、これを利用して、決まった場所に排泄をさせる習慣をつけるのが基本となります。


ですから、トイレの習慣づけの最初の一歩は、どの場所を愛犬のトイレにするのがいちばんいいかを選ぶことです。


飼い始めの子犬の排泄には、飼い主が立ち会うのが基本です。


つまり、子犬のトイレのしつけは、飼い主が主導権を持つのです。子犬の排泄の間隔を把握して、そろそろかなと思ったら、トイレに連れていってそこで排泄させるか、子犬が自分でトイレに行って排泄するかを確認して、とにかく毎回トイレだけで排泄が起こるようにし、それ以外の場所では排泄させないように気をつけます。


子犬のトイレのしつけ方で、よく言われるのが「子犬がソワソワしだしたら、トイレに連れていく」というものですが、この方法は失敗する可能性が高いと考えられます。


大切なのは、子犬には一度たりともトイレの失敗をさせないという気構えです。そのためには、その子犬の排泄のサイクルを把握しなければなりません。


子犬が排泄をがまんできる時間は、月齢+1時間(夜なら月齢+2時間)とされています。


生後2ヶ月の子犬なら、排泄のサイクルは3時間おきです。そのタイミングで、トイレに連れていってあげます。排泄が起こりそうなタイミングはだいたい決まっていて、眠りから覚めて動き出したあと、食べたあと、遊んだあとなどです。


排泄直前のサインは、


・床の臭いをじっくり嗅ぎながら歩きまわる

・物陰のほうに這い込んでいく

・遊びを急にやめる

・後ろ足を伸ばすようなしぐさで歩く

・同じところを回っているうち、両足を踏ん張って腰を落とす


●排泄しそうなタイミングを、目を離さないように見張っているようにします。


排泄するまでの時間はハウスに入れて、ある程度がまんをさせてからトイレに連れて行きます。


サークルで囲ったスペースの床全部にペットシーツを敷き詰め、どこで排泄されても構わないという状態にします。最初はサークル内はすべてトイレスペースになるので、それ以外の場所でうんちやおしっこをしてしまう失敗の可能性を少なくできるからです。


排泄したら、必ずほめて、ごほうびに遊んであげます。


見張っていることができないのであれば、ハウスとトイレ・サークルを合体させて、自然にサークルでトイレをするようなレイアウトにしておきます。


排泄する前にぐるぐる回って場所を決める子犬が多いので、サークルの広さは、グルグル回れるだけのスペースを確保して下さい。


トイレは、トイレトレーにトイレシーツを敷くようにします。トイレトレーを置かない場合には、ビニールシートを敷き、その上にペットシートを重ねますが、床を汚さないようにテープで留めるなどして、トイレシーツがずれないようにしておきましょう。


トイレシーツをちぎって食べてしまうようでしたら、事故につながることもあるので、新聞紙に取り替えるようにします。


おしっこをしたら、その上に新聞紙を重ねていけば、自分のおしっこの臭いがあるので、トイレを覚えるようになります。


●トイレシーツを使う場合は、大きいサイズのものを1枚敷くのではなく、1/4サイズのものを4枚使うようにすれば、汚したところだけ取り替えられるので、経済的です。トイレスペースはいつも清潔にしておきます。


サークルの中で、だんだんトイレスペースを狭くしていくようにして、覚えさせます。


場所を覚えて、自分からトイレに行くようになったら、サークルの入り口を開けておきます。(あるいは1面をはずします。)そこから中に入って、トイレで排泄できるようになれば、サークルをはずしてもだいじょうぶです。


トイレシーツの上で排泄を始めたら、「ワンツー、ワンツー」と声をかけます。


それを繰り返すことで、「ワンツー」と声をかければ、排泄させたい場所で排泄させることもできるようになります。


●トイレのしつけは、毎回同じ場所で排泄させて、できたらほめるということを繰り返します。


ごほうびにおやつをあげていると、それ欲しさに何回かに分けておしっこをするようになる犬もいるので、おやつは使わないようにしましょう。


トイレに失敗しても叱ってはいけません。


ふと見たら、床の上でちょうど子犬がおしっこを始めたところだったといった場合には、「今回は失敗」とあきらめて、終わってから黙って掃除をするだけにしてください。


思わず「だめだめ、待って!」と大声を上げたりすると、子犬は叱られているのかと思い、次からは飼い主の目を盗んで、隠れて排泄したり、おしっこをがまんするようになることがあります。ことトイレの問題では、絶対に叱ってはいけません。


一度おしっこをした場所には臭いが残っているため、何度もそこでしてしまうことがあります。酵素入りの洗剤でよく拭き、市販の消臭スプレーや犬の嫌いなビタースプレーをしておきます。


●「トイレでないところで排泄したら、鼻をその場に押しつけて叱れ」というのは、誤りです。


なぜなら、あとから叱っても犬は理解できないからです。犬がそそうをした場所にあとから鼻を押しつけて叱ったとしても、犬が理解するのは、①尿や便の臭いがする ②飼い主が怒っているということだけです。


この場所で排泄したことを飼い主が怒っているという因果関係は理解できません。


その結果、犬は飼い主の見ている前で排泄すると叱られるのだと受け取り、飼い主の目の届かないところへ行って、隠れて排泄するようになったりします。



トイレの習慣づけで大事なのは、はじめから毎日休まず続け、そしてできるだけ短期間に覚えさせてしまうことです。数日から1週間、長くても2週間以内を目標にして下さい。


「しつけはあせらず根気良くと本で読んだから、トイレのしつけも少しづつゆっくりでいいのかと思った」という人がいます。正しくは「なかなか覚えないからとあせって叱ったりせず、毎日根気良く続けなさい」ということですから、子犬から目を離さず、排泄はいつもトイレでさせるようにしましょう。


●オス犬が片足を上げておしっこをするのを「マーキング」といいますが、自分の匂いをつけてテリトリーを主張する行為です。


ですから、他の犬がその匂いに気づくように、できるだけ高いところ、犬の鼻の高さに近いところにおっしこをかけるのだと言われます。あるいは、できるだけ高いところにオシッコをかけて、自分を大きい存在だと思わせようという示威行為だという意見もあります。


マーキングは普通は家の中ではしませんが、来客などを犬が嫌がっている時にマーキングしてしまうことがあります。それは、犬がテリトリーを侵されたと感じているサインです。