出産に立ち会う


ブルドッグのように、あらかじめ難産が予想され、帝王切開を行うことが決まっている場合を除いて、犬の出産を病院で行うことは、ほとんどありません。慣れない場所での出産では、産まれた子犬を食べてしまう母犬が少なくないという指摘もあります。


一般的に、小型犬の場合は、横になった状態で出産し、頭数は2~3匹、中・大型犬の場合は排便するような格好で出産し、頭数は6~10匹とされています。


●陣痛~破水~胎仔の排出


周期的にくる陣痛にあわせて、母犬は排便ポーズに似た感じで、両足を踏ん張るようにしていきんでは休むということを繰り返す。


何回かいきんだ後で、陰部の内部に水を含んだ半透明の膜状のもの(羊膜)が見えてくる。
(羊膜が見えてから60分以内に胎仔が生まれる。)


羊膜が破れることを破水と呼び、胎仔が出てくる。
(羊膜が破れずに、包まれたままで胎児が出てくることもある。)


胎仔の出てくる体位は、頭からでもおしりからでもいずれも正常。つまり、犬では、半分ぐらいは逆子で産まれてくると言われるが、それが難産の原因とは限らない。

しかし、頭からの場合には前足、おしりからの場合は後ろ足が最初に産道から出てこないと自然分娩はむずかしい。獣医師による処置が必要になる。


破水が始まってから30分経っても胎仔が産まれてこない、出血が多い、緑色のオリモノが出る、出産間隔が1時間以上空くといった場合には、獣医師の処置が必要になる。


●母犬が羊膜を破ってへその緒を噛み切り、子犬の体や鼻先をなめて呼吸を促す。

子犬を自分の乳に近づけて授乳させる。

第一子を産んでしばらくしてから第二子の陣痛が始まる。分娩の邪魔にならないように産まれた子犬を隔離する。

一頭当たりの出産の時間は、5分~60分以上。次の分娩が始まるまでの間隔も30分~3時間と幅がある。


●胎盤の処理

胎仔が産まれた後で、緑色の胎盤が出てくる。これは「後産」と呼ばれ、子宮や産道に残った胎盤が排出されてきたもの。子宮と胎盤は血液を交換し合っているので、胎盤がはがれるときには多量の出血がある。


「母犬が胎盤を食べないと母乳が出ない」と言われることがあるが、胎盤を食べるとまれに嘔吐をしたり、下痢になることもあるので、片付けてしまってかまわない。


●異常分娩(難産)

羊膜が見えてから1時間以上たっても胎仔が出てこない。

1頭目が産まれていないのに、緑色の液体が陰部から出てきた。
(2頭目以降は緑色の液体がでてもかまわない)

お腹の中に胎仔が残っているのに、4時間以上たっても次が出てこない。

胎仔の体の一部が出ているが、ひっかかって出てこない。

出産予定日から3日以上遅れているが、分娩しない。


●帝王切開

母犬がいきんでいるのに胎児が産まれてこない場合、帝王切開すべきかどうかは胎仔の心拍数で決定される。

正常な胎仔の心拍数は250以上、胎児が弱ってくると心拍数が減ってくるので、230以下になるようなら帝王切開をする。

200以上心拍数があるうちに、帝王切開をすれば、生存率はかなり高く、150を割ると危ないと考えられる。帝王切開しても、その後も妊娠は可能。


夜間救急病院の緊急手術で最も多いのが、犬の帝王切開です。


犬は安産だと安易に考えてはいけません。事前に獣医師の診察を受けて、お腹に何頭の胎仔がいるかなどをきちんと確認して十分な準備をしておきましょう。


一般的には、大型犬より小型犬の方が難産の傾向にあり、帝王切開による出産も多くなります。



帝王切開で出産した場合、母犬が生まれた子犬をなめる機会が減ります。


子犬の発育過程の重要な時期、「生後2週目までの新生仔期」に、母犬になめてもらうことは、子犬の性格形成にとても大切なことです。母犬との接触が少なかったり、母犬から早く離された子犬は、将来、攻撃的になる可能性が指摘されています。