●オオカミの繁殖
オオカミは、配偶者のどちらかが先に死なないかぎり、一夫一妻制を生涯守り続けると言われます。
春から初夏までが繁殖期ですが、一頭のリーダーが複数のメスと交配することはないとされます。これは、一頭のオスの遺伝子だけが増えすぎるのを防ぐための自然の摂理と考えられます。
メスの妊娠期間は、約2ヶ月で、夏に出産します。メスは、出産のための巣穴を山や土手の斜面に作ります。1回の出産で、4~5頭の子オオカミを産みます。
メスは、子オオカミをなめて、消化不良や便秘、尿閉症にならないようにします。また、それは親子のきずなを強くします。
メスが子育てをしている最中は、オスは狩りに出かけたり、外敵を防いだりする役割を担っています。
子オオカミが離乳期を迎える頃から、メスも群れと一緒に狩りに出かけるようになり、残された子オオカミたちを守るのは、群れの中で最も強いオスです。
狩りから戻った直系の兄弟オオカミたちは、胃袋に入れた肉を吐き戻して、子オオカミたちに与えます。子オオカミが兄弟の口の周りをなめることで、吐き戻しが誘発されるとされます。
兄弟オオカミたちは、子オオカミの遊び相手もします。その遊びによって、子オオカミの筋肉や知能が発達するとともに、狩りの基礎的な訓練にもなっています。
●メス犬の発情期
メス犬の最初の発情は、平均的には生後7ヶ月頃に来ます。それ以後の発情は平均、半年から10ヶ月の周期で訪れます。
小型犬は性成熟が早く、6ヶ月~12ヶ月で、大型~超大型犬では、8ヶ月~18ヶ月とされています。
交配は、2回目以降の発情から可能ですが、2歳未満での繁殖は好ましくないと言われます。
5歳になるまでが適齢期です。それ以降は、子犬の先天性疾患の発症率が高くなったり、難産になりやすいので、交配すべきではないとされています。
ビーグル犬65頭の調査では、高齢になればなるほど出産頭数が少なくなり、子犬が乳離れするまでの死亡率も高くなると報告されています。
発情期 90日間 → 休止期 90日間 → 発情期 90日間 → 休止期 90日間
発情期の初期は、外陰部の膨らみと出血でわかります。
陰部の下り物が透明に近い色に変わったときが、本当の発情期です。
人間の生理では、排卵が終わって着床しなかった卵子が排泄されるときに大量の出血があり、それを生理といいますが、犬の場合には、機能性出血と呼ばれるもので、排卵前の出血です。
発情期には、通常はボールペンの芯ぐらいしかない子宮の筋肉や粘膜が発達しはじめて、3~4倍の太さになり、長さも数倍に延びます。そこからじわっと少量の出血があります。
メス犬の発情による出血が始まった日から数えて、9日目が排卵日とされます。卵子が受精できるようになるまでにはそれから2日かかり、受精可能な期間は2日間あるので、メス犬に出血があってから10日目~14日目の間に複数回交配する方法が一般的にはよく行われています。
オス犬は、生後6ヶ月を過ぎると精巣機能も充実し、生後11ヶ月過ぎからはいつでも交尾が可能です。発情の周期はありませんが、発情したメス犬に出会ったり、その尿や分泌物の性フェロモンを感知すると性的に興奮します。犬は脳に直結している器官でフェロモンを感知していると言われますが、それは上あごの切歯骨の後ろにある「ヤコブセン器官」と呼ばれる副嗅覚器です。
精子の膣内での生存期間は、最大で7日間と言われています。
母犬は、産後3日後くらいから乳腺付近の皮脂腺からもフェロモンを分泌します。それは犬鎮静フェロモン(D.A.P.)と呼ばれ、犬を落ち着かせる働きがあるとされます。問題行動を起こす犬をリラックスさせるために使われることがあります。
*発情前期(約11日間)
体内でのホルモン濃度が上がり始める時期。
尿の頻度が多くなり、自分の性器周辺を良くなめるようなしぐさを見せる。
外陰部が肥大して出血が見られるようになる。出血量にはばらつきがあり、多い場合は生理帯が必要となるほど出血するが、少ない場合は全く出血の見られないこともある。
継続期間は平均約11日。
この時期のメス犬は性器からフェロモンを発しているので、オス犬はその匂いでメス犬が発情していることを知ります。この時期にメス犬を屋外に連れ出すと、出会ったオス犬が興奮してしまうので、散歩は控えるようにします。
*発情期(7~12日間)
メス犬のオス犬を受け入れる心と体の準備が整っている期間。
シッポに触れると、反射的に斜めに上げて自分の性器を見せるようになる。
発情期に入って2~3日後(出血から数えて13~14日目)に排卵されることが多いため、その前後2日くらいが最も妊娠しやすい交尾期間(出血から11~16日)になる。
排卵された卵子の受精可能な期間は約5日間。オスの精子はメスの体内で約7日間生き続け、卵子と結びつくチャンスを待つことになる。
*発情後期(~60日間)
排卵が終わり、発情期に現れたメス犬の心と体の変化が元に戻る時期。
この時期には、妊娠しているかいないかにかかわらず黄体ホルモンが分泌され、子宮内膜が増殖して、乳が張ってくる。妊娠期間と同じく約2ヶ月続く。
発情後期の後半からプロラクチンというホルモンが増加することで、「偽妊娠」と呼ばれる身体の状態や行動を示すことがある。乳汁が分泌され、巣作りをしたり、人形や小動物を手放さないなどの行動が見られる。
以降は発情休止期に入り、次の発情期までオス犬には興味を示さなくなる。