●超音波を聞き取る能力
動物たちは、人間が聞くことのできない高い周波数の音、一般的には「超音波」と呼ばれる音を聞き取ることができます。イルカは15万ヘルツ、コウモリは12万ヘルツ、そして犬は6.5万ヘルツの音を聞き取れると言われます。ちなみにオオカミは、イルカに匹敵する聴力をもっているという説もあります。
人間は、毎秒、低い音-16~20ヘルツから高い音-20,000~25,000ヘルツまでを聞きわけることができます。高周波の領域では、人の聴覚は犬にはるかに劣っていますが、周波数5,000ヘルツ以下の音域では、似通った音を聞き分ける能力ははるかに優れているのです。
犬は、超音波を聞き取れることから、超高音が出せる「ゴールトン・ホイッスル」という笛を、犬を呼び寄せるのに使うことがあります。
●小さな音を聞き取る能力
犬は、遠いところの音を聞きわけることができます。人間に比べると4倍の能力です。
1928年に、W.エンゲルマンは、直径3ミリの小さい玉を3センチの高さから鉄板に落として出した小さな音を、人間と犬(ジャーマン・シェパード)それぞれがどれだけ離れたところから聞き分けられるかを実験しました。
その結果、人間は6メートル以上離れると音が聞こえなくなるのに対し、犬は24メートル離れたところでも、その小さな音をキャッチできることが分かりました。
英国の科学者、モーリス・バートンによれば、犬は自分が聞く必要のある音だけを選択し、それだけに集中できるように内耳を動かし、聞きたくない音を遮断できると発表しました。
雷の音や打ち上げ花火の音を怖がる犬は少なくありませんが、生まれつき音に対して敏感で、大きな音をこわがる犬を「音響シャイ」と呼びます。
雷や花火の音が鳴り出すと、どこかに隠れようとしたり、ガタガタ震える犬もいて、長く続くとストレスからまいってしまうものもいます。
●いろいろな耳の形がある
耳殻には17個の筋肉があって、耳を自由に動かすことができるので、犬は耳で感情表現をしています。
何かに注意を向けていたり、警戒している時には耳を前に向けてピンと立てます。怖がったり、自分よりも強い犬に会ったりすると、耳を後ろに伏せます。
寒い地域で暮らしてきた犬種の耳は小さいのに、暑い地域の犬種の耳が大きくなっているのは、耳殻が大きいと体温を放熱する効果があるからです。
耳が立っている犬は耳で感情を表現できますが、垂れ耳の犬では明確ではありません。犬の耳が垂れているのは、幼形成熟(ネオトニー)の特徴のひとつと捉えられていて、従順な性格であることから、特に強く自己主張する必要がなくなったからだという説もあります。
●バット・イヤー(こうもり耳)
直立耳の一種で、耳朶(じだ)が広く、先が丸い耳。フレンチ・ブルドック
●セミプリック・イヤー(半直立耳)
直立した耳先が、前方に少し垂れているもの。コリー
●ボタン・イヤー
半直立耳の一種で、耳の先が前方にV字のように垂れて折れ曲がっているもの。エアデール・テリア
●ローズ・イヤー半直立耳の一種で、耳朶(じだ)を後ろに寝かすか、あるいは折りたたみ、内耳(ないじ)がバラの花弁ように見える。ブルドック
●ドロップ・イヤー(垂れ耳)
つけ根から垂れている耳。マルチーズ、シー・ズー
●ブリック・イヤー(直立)
立っている耳で、ジャーマン・シェパードのように生まれつきのものと、ドーベルマンのように断耳したものがある。