チンパンジーの子ザルは、母乳が出る3年を過ぎても、その後2年間はオッパイを吸い続けます。母ザルが死んで、オッパイを吸えなくなると、子ザルは拒食になって死んでしまうそうです。子ザルにとっては、5年間の母親とのスキンシップがとても大切なのです。
人間の場合は、3歳までの親子のスキンシップが、その後の精神的な成長に大きな影響を与えると考えられています。
子犬の場合には、世界的なスタンダードでは、犬仲間への社会化を身につけるために、生後8週齢(56日)までは母犬や兄弟犬と一緒に生活させなければならないと言われています。
子犬が周囲の環境からいろいろな刺激を受けて、感受性を育てていく期間を「臨界期」と呼びます。
生後21日を過ぎると、子犬は目もよく見えるようになって、聞いたり、嗅いだりしながら、母親や兄弟犬とのふれあいを通じて、犬仲間への社会化を身につけ始めます。その後、子犬の脳や神経系が、成犬と同じぐらいの容量を持つようになるといわれる生後7週齢(生後49日)を迎えるまでの期間、兄弟犬と一緒に遊ぶことがとても大切なのです。
7週齢(生後49日)よりも前に、子犬を母犬や兄弟犬と離してしまうと、他の犬に攻撃的になったり、おびえて近づかないといった社会化ができていない犬に育ってしまいます。
7週齢から12週齢(生後84日)までは、人になつくための大切な期間になります。もちろん、それ以前にも世話をしてくれるブリーダーとのふれあいを通じて、人が好ましい存在であることが刷り込まれていますが、最も感受性が豊かなこの期間に、人との関係が形成されるのです。
犬が幸せになるためには、犬社会にも人社会にも順応できる資質が必要です。犬にも人にもフレンドリーで、従順で飼いやすい犬になることが、人間社会で幸せに暮らすための条件になります。
子犬に必要とされるスキンシップを与えることは、心の栄養を与えることなのです。